本連載では、だいち災害リスク研究所 所長の横山芳春氏が、地震や液状化などの予防策として注目されている地盤調査について解説します。第1回となる今回は、地盤調査の重要性を説きつつ、地盤調査の歴史を振り返りながら、現在主流となっている調査手法について取り上げます。
住宅は、全てが土台となる「地盤」の上に建っている。地盤とは、普段私たちが見ている地面だけではなく、その地下に続く土や地層も含めたものを指す。このことから、「土地を買う」とは「地盤を買う」ことを意味する。
そのため、仮に堅牢な住宅を建てたとしても、地盤が軟弱で住宅の重さに耐えられないと、「砂上の楼閣(ろうかく)」のごとく地盤沈下を起こして傾いてしまう。こういった地盤は、住宅を建てた後に改善することが難しく、予防策として事前の地盤調査は欠かせない。
地盤が軟弱で建物の重さによって一方向に地盤沈下が進行していくと、住宅の傾斜を招く「不同沈下」が生じる。不同沈下によって住宅に傾斜が発生すると、ドアの立てつけが悪くなり、建材にひびが入るなどの破損が起きるだけでなく、傾いた住宅の居住者には、めまい、頭痛、吐き気、睡眠障害などが生じることも多い(図1)。
一定のレベルを超える不同沈下で家屋に傾斜が発生した際には、事前の地盤調査で、地盤改良工事の実否や品質、基礎工事の不良が判明していれば、契約不適合責任を不動産会社に追及できることもある。
上記のトラブルを防ぐのに役立つ地盤調査は、住宅を建築する前に、「建築予定地の地盤で地盤沈下や不同沈下が発生する可能性があるか」「建物の重さに地盤が耐えられるか」「片側に沈んで不同沈下を起こすことがないか」を確認することができる。
地盤調査で得られたデータは、宅地の地盤状況を見える化し、建築を予定している建物の種類や重さ、地盤改良工事(地盤補強工事)の必要性について検討するのに使える。地盤調査で地盤改良工事が必要と判断されたときは、軟弱な地層の深さや厚さなどを踏まえて、適切な工法が選ばれる。
地盤改良工事の工法には、地盤表層部の約2メートルをセメント系の固化剤と土を混ぜて転圧して固める「表層改良工法」、地表から約6〜8メートルまでの土をセメント系の固化剤と混ぜて電柱のような柱状の改良体を土中に作る「柱状改良工法」、小口径の鋼管杭や木製の杭を打設する手法などがある。
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