本連載では、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA) 専務理事 成田一郎氏が「JFMA調査研究部会のFM探訪記」と題し、JFMA傘下で、マネジメントや施設事例、BIM×FMなどの固有技術をテーマにした合計18の研究部会から成る「調査研究部会」での研究内容を順に紹介していく。第7回は、SDGsタスクフォースのさまざまな活動について説明する。
日本ファシリティマネジメント協会(以下、JFMA)では、協会内の調査研究委員会に18の研究部会があり、活発に活動しているだけでなく、時代の変化や喫緊の課題などを受けて、適宜タスクフォースを発足させ、部会とは別途で活動している。SDGsタスクフォースもその1つで、1年ほど前にBUILTに掲載した連載の第2回で、その活動の一部を採り上げた。今回は、その後の詳しい解説となる。
連載第2回では、JFMAの機関誌「JFMAジャーナル2021冬号 No.201」の特集「SDGsから考えるFMの未来−ニューノーマル社会の先にあるもの」での有識者16人のインタビューを採り上げた。
★連載バックナンバー:
本連載では、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が「JFMA調査研究部会のFM探訪記」と題し、日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)傘下で、マネジメントや施設事例、BIM×FMも含めた固有技術をテーマにした合計18の研究部会から成る「調査研究部会」での研究内容を順に紹介していく。
インタビューしたのは2020年の夏で、既にこの時、世界中がコロナ禍に覆われ、閉塞感が漂う状況にあったが、英国ロンドンのPLPアーキテクチャーに所属する相浦みどり氏、米国ポートランドに住むオレゴン州登録の建築家・柳澤恭行氏、ニューヨーク市公園局の島田智里氏といった海外在住の3人と、国内の13人に実に気持ち良くWebインタビューに対応してもらった。
短期間にこれだけの方にインタビューできたのは、逆にコロナ禍ゆえだから実現したのかもしれない。この内容は、SDGsの潮流として機関誌「JFMAジャーナル」に掲載している(図1)。
その後、タスクフォースメンバーでさまざまな視点から検討し、報告書「SDGsで変わるファシリティマネジメント−JFMA SDGsタスクフォース報告書2021(入門編)」を2021年8月に発刊した。そこには、ファシリティの現状と未来、独自のアンケート調査結果、SDGs導入のためのステップ、ワークショップの試み、関連資料などを、A4サイズで、180ページを超える報告書としてまとめた。
具体的には、各種調査や第一線の専門家、実践者へのインタビューなどから、ファシリティでのSDGsは、広義の「環境負荷の最小化、ウェルビーイングの最大化」で、建築や空間としての新たな価値を創造するデザイン手法を開発していく必要性を述べており、ファシリティマネジャーのSDGs入門編として活用できるものだ(図2)。
さらに、2022年2月には、第16回日本ファシリティマネジメント大会(ファシリティマネジメントフォーラム2022)でシンポジウムを開催した。テーマは「これから生き抜くためのSDGs・ESGとFM−サステナブル変革の時代にFMがなすべきこと−」。ここでは、SDGs/ESGは企業にとって社会的責任であるのと同時に、将来にわたっての成長戦略と捉えている。
会場では、政府や企業のアドバイザーとして多方面で活躍されているニューラル 代表取締役 夫馬賢治氏、JFMA副会長で国内外の都市開発に携わってきたNTT都市開発 相談役 牧貞夫氏、JFMA 理事/フェローで調査研究委員長の似内志朗氏といった3人のパネリストと、JFMAフェローでコクヨの齋藤敦子氏がコーディネーターを務め、パネルディスカッションを行った
パネルディスカッションでは、ファシリティマネジメントで何ができるのかを展望し、SDGs指向で経済性とサステナビリティの両面を狙うプロジェクトの重要性について話し合っただけでなく、街づくりにはSDGsの全てが含まれていることを考慮し、公共と民間が手を組んで計画していくことの必要性について議論し、不動産・建設業界は制約が増えていくが、リスクではなくチャンスとみなすべきことが重要だと言及した(図3)。
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