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» 2022年07月29日 10時00分 公開

JFMAの「SDGsタスクフォース(その2)」 世界的な建築家など第一線論客によるシンポジウムや座談会JFMA調査研究部会のFM探訪記(7)(2/2 ページ)

[成田一郎(公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会 専務理事),BUILT]
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「SDGs×FM」特別座談会開催

 2022年7月には「SDGs×FM」として、特別座談会を企画して配信した。テーマは、「世界の先進都市がコロナを経てどう変わったのか−海外で活躍する専門家たちと展望する、未来の街とFM−」だ。

 特別座談会では、先に紹介したロンドンのPLPアーキテクチャーに所属する相浦氏やポートランドの建築家でポートランド州立大学の柳澤氏に講演してもらった。

 PLPアーキテクチャーは、都内の「日比谷公園」に隣接した内幸町1丁目の開発プロジェクト「TOKYO CROSS PARK構想(都内最大)」のマスターデザインの担当で注目を浴びているが、世界で最もウェルビーイングでスマートなオフィスビルとされるオランダのアムステルダムに位置する「The Edge」の設計事務所としても有名だ。なお、The Edgeは、JFMAの調査団が2019年に現地訪問している。

 柳澤氏は、日本で「街づくり」の手本として有名な北海道の姉妹都市でもある米ポートランドで活躍中のオレゴン州登録建築家で、現地の最新状況を話してもらった。また、来日の前日には、ポートランドの街並みを自転車で撮影した映像も紹介した。

 加えて、現在、JFMAでは、SDGs×FM特別座談会をオンデマンド配信中(2022年7月7日〜8月8日)で、相浦氏と柳澤氏に、JFMA SDGsタスクフォース リーダー 似内志朗氏と齋藤敦子氏がインタビューしているので、その一部を紹介する。

PLPアーキテクチャーの街づくりとオフィス

 具体的には、相浦氏が座談会で説明した街づくりの計画コンセプトは「LIFE CENTRIC」。LIFE CENTRICでは、これからの街は、人間だけでなく生命中心で、モノ、サービス、体験が変化/融合して人が活性化し、環境とつながり、人の可能性を最大化する「意義のある」経験ができるように、まさに「人中心」から「生命中心」となるべきだとする。

 さらに、LIFE CENTRICの柱となるテーマ「6 Principles for Human Centric City」では以下のキーワードを重要視している。

  1. ウェルビーイング(WB)
  2. スマートテクノロジー(SM)
  3. サステナビリティ(CR)
  4. ワークとライフの結合(BL)
  5. プレースメーキング(PM) =その土地ならではのもの
  6. ソーシャルインタラクション(I)= 交流

 上記のコンセプトの実践事例として、オランダ・アムステルダムのThe Edgeや英国・ロンドンの「Twenty-two」と「Bankside Yard」、現在都内で計画中の「内幸町1丁目計画」などを解説した。ちなみにThe Edgeは、世界トップクラスの「グリーン+スマート+ウェルネス」を実現している。

 内幸町1丁目計画のTOKYO CROSS PARK構想では、日比谷公園に隣接するエリアで、関連権利者10社(NTT都市開発、公共建物、第一生命、帝国ホテル、東京センチュリー、東京電力パワーグリッド、NTT、中央日本土地建物、NTT東日本、三井不動産)がスマートシティーの構築を進めている。内幸町1丁目計画は、「FOR PEOPLE&PLANET」なプロジェクトで、計画の概要を聞いただけで筆者はワクワクし、完成を期待している(図4)。加えて、これからのワークプレースは、「人が活性化する場」で「仕事に行く場」ではなく、「自分の存在意義を高める場」になるという。

「SDGs×FM」特別座談会、左から3人目がPLPアーキテクチャーの相浦みどり氏

日本の「街づくり」の手本、ポートランドから

 柳澤氏は、セミナーでポートランドのグリーンインフラについて話した。グリーンインフラとは、自然環境が持っている機能を社会のさまざまな課題解決に利活用するもので、近年日本でも導入されつつある。

 グリーンインフラを重視したポートランドの街づくりでは、住民が参加した証に敷地内のレンガに名前を刻むだけでなく、年間300件のイベントを開催し、集団で楽しめる場や個人でも満喫できる場所を設ける。

 さらに、自転車優先道は、1000マイルのグリーンウェイで、「住民がやりたいことや社会のためになること、街を良くしていくこと」を目標に掲げ、裸で自転車に乗り走行するなどのイベントなども開かれ、街を活気づけている。

 街中には、アートをデザインし、アートの状態を維持するために、各居住者にアート税をかけて、工事費の2〜3%を徴収した。アートに関連するポートランドの街づくり「シティー・リペア」も解説。シティー・リペアは、官民連携で道路の交差点にペインティングなどを施し、相互扶助でコミュニティーの連帯感を保つ取り組みだという。

 柳澤氏は、「ポートランドでは、2番煎(せん)じでも構わず、気にせずに、素晴らしい取り組みを実践していく。それらを先導する人やファシリテーターも存在し、ミッションを求める若い世代も巻き込んで豊かに人間関係を醸成して、街づくりを楽しんでいる」と話す。

 また、柳澤氏は、BIM(Building Information Modeling)の実践者でスペシャリストでもあり、BIMに活用方法についてもアドバイスした。具体的には、日本と米国におけるBIM活用方法の違いやFMの視点からのBIM、設計条件の考え方の違いなど、内容は多岐にわたった。各講演の時間は、約90分とボリュームはあるが、密度の高い充実した時間を楽しめるので、ご視聴ください。

「SDGs×FM」特別座談会、左から3人目がオレゴン州登録建築家の柳澤恭行氏

著者Profile

成田 一郎/Ichirou Narita

2011年7月、社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会(現・公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会:JFMA)常務理事兼事務局長に就任。2016年6月には日本ファシリティマネジメント協会 専務理事に就任し、現在に至る。

一級建築士。認定ファシリティマネジャー。

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