Japan Drone2022−Expo for Commercial UAS Market−

ドローンセキュリティガイドを公開した「セキュアドローン協議会」に聞く(後編)―建設ドローン産業の可能性を広げる“DaaS”ドローンがもたらす建設業界の“ゲームチェンジ”(1/3 ページ)

ドローンは、歴史的には軍事の世界で飛躍的な発展を遂げてきた。それと同時にカウンタードローン/アンチドローンと呼ばれる敵対的なドローンを検出したり、通信をジャミングしたりなど、ドローンを阻害する技術も進化している。そのため、民間企業でもドローン運用時に、悪意あるリスクをどう防ぐかがこの先のフェーズでは問われてくる。

» 2022年07月25日 06時33分 公開
[加藤泰朗BUILT]

 IT企業が中心となってドローンの安心安全な操作環境とセキュアな業務活用を掲げる非営利法人のセキュアドローン協議会 会長 春原久徳氏に、ドローンを安心安全に運用するための対策やドローン産業の活性化に押さえておくべきポイント、そして日本のドローン産業が目指すべき未来像をうかがった。

 後編では、前編で示したドローンを取り巻くさまざまなリスクを踏まえ、具体的なサイバー/フィジカルのセキュリティ対策はどう講じるべきか、今後の市場を見据えドローンで得たデータを活用するサービス“DaaS(ドローン・アズ・ア・サービス)”で広がるドローンビジネスの可能性について聞いた。

セキュリティ対策はルールに縛られるべきではない

 それでは、具体的にドローンのセキュリティ対策は、誰がどう進めればよいのだろうか。春原氏は、対策の主体には「機体メーカー、ドローンのサービス提供企業、ユーザー企業」の3つのレイヤーがあるとしたうえで、最も難しいのはユーザー企業による対策だと話す。

 「ユーザー企業は、何か事故が起きると、○○社が使用中のドローンが落下したなど、真っ先に企業名がメディアに露出する。自社のリスクを下げるためにも、機体メーカーに対してホワイトペーパー提示を促すなど、積極的に発言してもらいたい」(春原氏)。

「Japan Drone2022」の会場でインタビューに応じるセキュアドローン協議会 会長 春原久徳氏

 一方で、ユーザー企業がリスクを恐れて、やみくもにセキュリティ対策しても意味がないと指摘する。「日本ではレベル4のためのルールづくりが進展しているが、ユーザー企業がビジネスとして続けていくためには、セキュリティをかけることで、ドローンの運用に、どの程度のメリットまたはデメリットが生じるかを考慮すべきだ」(春原氏)。

 春原氏の言うように、ユーザー企業が一番困るのは墜落。そのため、墜落する/させられる、あるいは乗っ取られるような事態をいかに未然に防ぐかがセキュリティ対策の肝となる。

 「その次に考えるべきがデータ漏洩。ただし、この順番は、ドローンで集めたデータそのものの価値で変わる。一例を挙げれば、鉄塔の点検データでは、百歩譲ってドローンの落下は許容するが、点検データの流出を絶対に避けたい際は、必然的にデータ暗号化の方に、セキュリティコストを重点的にかけることとなる。そのため、用途ごとや企業の利用方法次第で、セキュリティの在り方は異なってくる」(春原氏)。

 もし、盗まれても困るデータがなければ、セキュリティそのものが重要ではなくなる。盗られるものがないのに、わざわざ頑丈な鍵を作っても、鍵を紛失してデータが開けなくなるならば、セキュリティ対策は余計なコストとなってしまう。だからこそ、レベル4にあたり、自分たちがドローンをどう活用して、何が価値を生むのかを見極め、優先順位をつけて対策する。付加価値以上のコストをかけても、ドローンビジネスは成り立たないというわけだ。

 「最悪なのは、人口集中地区での目視外飛行は関係ないのに、とにかくレベル4対応の機体以外は使用しないなどの社内ルールを決めてしまうこと。一般的に、レベル4対応の機体は高額。無理に高価なモデルを購入して、本当に事業として成り立つのかといったトータルコストを考えなくてはならない」(春原氏)。

 他の先進技術をみても、日本ではとかく“ルールに則(のっと)らなければダメ”と規則や基準にとらわれがち。ルールに縛られ、本質を見失ってしまうような本末転倒とならないように、経済合理性があり、本当に必要なセキュリティを追究することは、ドローンビジネス成功の過程で決して避けては通れない道だ。

ルールに縛られて不必要なセキュリティコストをかけしまっては本末転倒 Photo by Pixabay
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