リコーの大谷氏は、「当社のSmart Vision事業は、データを活用したデジタルサービスを現場だけでなく、さまざまな環境で使えるようにするRICOH360 プラットフォーム事業を推進している。主力製品としてパノラマカメラの“RICOH THETAシリーズ”を販売しているだけでなく、関連するサービスとしてパノラマ画像向け保存クラウド“データセット”を展開している」と話す。
RICOH THETAシリーズは、一般消費者向けのパノラマカメラ“THETA”を2013年11月に発売したのを皮切りに、その後、性能が向上した“THETA m15”や“THETA S”といった製品を拡充し、顧客のニーズに応えている。
THETAシリーズで役立つSaaSとして、リコーでは、「RICOH360 Tours」と「RICOH360 Projects」をリリースしている。RICOH360 Toursは、部屋や見せたい場所のパノラマ画像を組み合わせることで、対象のエリアにいるような臨場感を演出し、バーチャルツアーに使え、RICOH360 Projectsは図面とTHETAシリーズで撮影した画像をひも付けする。
データセットに関しては、ユーザーが増えており、2021年時点でユーザーによりデータセットにアップロードされたパノラマ画像が1億7000万枚を超えている。
「Smart Vision事業の業績は、VR市場への期待を受けて、2013〜2016年まで、THETAシリーズの売れ行きが好調だった。しかし、VR市場の低迷に伴い、2016〜2018年にTHETAシリーズの売上は下がったが、2019年以降は、不動産業や建設業で、パノラマカメラで作成したパノラマ画像を、物件の内見や現場の可視化などで活用することが浸透し、売上は上昇傾向にある」(リコーの大谷氏)。
今後は、THETAシリーズやデータセット、専用ソフトウェア、SaaSを強化するとともに、サブスクリプションサービスと買い切りの製品を組み合わせた販売方法「SaaS Plus a Box」に注力する他、不動産業と建設業に向けたサービスを創出していく。
建設業向けのサービスでは、THETAシリーズやデータセット、専用ソフトウェアなどをBIMと連携できるようにし業務の効率化を後押しする他、デジタルツインの作成に対応したウェアラブルカメラ「H/W:Wear(仮称)」の開発も進める。
また、RICOH360 ToursとRICOH360 Projectsの土台となるAPI「RICOH360 image processing API」は、THETAシリーズのユーザーだけしか利用ができなかったが、他社のパノラマカメラで撮った画像でも使えるようにしていく。RICOH360 image processing APIは、THETAシリーズのユーザー向けAPIで、搭載されたAIにより、パノラマ画像から、ツアー動画と間取り図の生成やステージング(階層分け)、自動切り出しなどが行える。
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