リコーはステレオカメラとAI技術を組み合わせ、一般車両で道路の舗装状況を計測するシステムを開発した。公共の路面性状調査業務を受託する際に必要となる土木研究センターの性能確認試験に、このほど合格した。
リコーは2018年9月10日、開発した「路面性状モニタリングシステム」を搭載した車両が、土木研究センターが行った「路面性状自動測定装置の性能確認試験」に初めて合格したことを明らかにした。
路面性状モニタリングシステムは、ステレオカメラ複数台を一般車両に搭載して、走行しながら路面の「ひび割れ」「わだち掘れ」「平たん性」を自動で測定・分析するシステム。ステレオカメラは、2台のカメラの左右の視差情報を利用して、前方にある対象物の奥行き情報も取得し、立体的に把握できるカメラ。
性能確認試験に合格したことで、これをクリアすることが求められる公共事業の路面性状調査業務が受託できるようになった。今後、リコーでは受託業務として自治体が管理する市道での測定を開始する。
社会インフラである道路を維持管理するためには、適切な時期に修繕を行う必要があるが、現在は専用車両での計測が主流となっており、費用が高額になることや車両が入れない生活道路までは点検できないといった問題があった。リコーでは専用車両ではない、小回りの利く普通車を採用。これにより、主要道路だけでなく、より多くの道路の測定が可能になり、ステレオカメラによるモニタリングシステムで「ひび割れ率」「わだち掘れ量」「平たん性」の3項目を1度の走行で計測するため、業務効率化にもつながる。
実際の計測では、ステレオカメラで路面の3次元画像と輝度画像を同時に撮影。「ひび割れ率」は、撮影した輝度画像を結合し、白線を基準に直線化して50cm(センチ)角に画像を区切り、AIでひび割れレベルを自動で判定。数多くのサンプルデータを学習させることでAIの精度が向上し、目視の判読結果と同等の精度が得られるようになった。
「わだち掘れ量」は、幅員方向の画像結合の結果から、20m(メートル)の走行ごとに道路断面の3次元形状を確認する。「平たん性」は、道路の中心から左1mを測定し、進行方向の画像結合結果から連続的に3次元形状を測定する。
この3つのデータをベースに、維持修繕の総合的な指標の「MCI(Maintenance Control Index)値」を算出。MCI値は、「劣化無し」「劣化小」「劣化大」など、路面のコンディションを段階分けして、結果を地図上にマッピングすることで、道路の舗装状態を可視化することができる。
路面性状モニタリングシステムにより、撮影から測定結果の作成までを自動化・高度化できるため、効率的かつ網羅的に路面の舗装状態を把握することが可能になる。道路を修繕する優先順位や時期を的確に決めることにつながると期待されている。
土木研究センターの性能確認試験では、「距離測定精度」は光学式移動距離測定方式で、光学測量機による距離の測定値に対し、±0.3%以内の精度が認められた。「ひび割れ測定」では、ステレオカメラ撮影で幅1mm(ミリ)以上のひび割れを識別可能なことを確認。「わだち掘れ測定精度」は、横断プロフィルメーターによるわだち掘れ深さの測定値に対し、±3mm以内で、「平たん性測定精度」は縦断プロフィルメータによる標準偏差の測定値に対し、±30%以内の精度とされた。
リコーでは2016年7月から2017年8月までの間、国土交通省、秋田県、仙北市とともに「路面性状モニタリング実証実験コンソーシアム」に参画し、実証実験に取り組んできた。コンソーシアムでは、「一般車両へ搭載可能な路面性状計測システムの実現」と、「撮影から計測結果作成までの業務プロセスの自動化・高度化」を技術開発の指針としていた。実証実験では、「ひび割れ率」「わだち掘れ量」「平たん性」とMCI値は、今までの専用車両などでの計測とほぼ遜色のない精度で得られたという。
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