RC造高層住宅用地震対策構法を東京・品川区の建物に初適用、大成建設耐震

大成建設は、2016年に開発した地震対策構法「TASS-Flex FRAME」を、東京都品川区で開発を進める地上23階建てのRC造高層住宅に初適用した。

» 2022年03月16日 13時00分 公開
[BUILT]

 大成建設は、高強度・小断面の柱と梁(はり)部材で構築した柔軟な骨組み構造に、連層壁※1とオイルダンパーを組み合わせた制振システムを用いた地震対策構法「TASS-Flex FRAME」を、東京都品川区で開発を進める地上23階建てのRC造高層住宅に初適用したことを2022年3月9日に発表した。

※1 連層壁:建物中央低層部に複数層に渡り連続して配置されている壁で、地震や風により生じる横方向の力に抵抗。

建物頂部の揺れ幅を50センチに

 国内では、将来発生が予想される南海トラフ地震で、東北地方太平洋沖地震を上回る地震動が想定されている。こうした巨大地震では長周期・長時間の揺れが継続するため、共振現象によって時間の経過とともに建物の揺れが増幅する恐れがある。

 共振現象による揺れの増幅を抑えるには、揺れのエネルギーを吸収する装置であるダンパーの設置が効果的とされている。しかし、高層住宅では建物の重量が大きいため揺れのエネルギーが大きく、ダンパーの設置スペースが少ないことから、揺れの増幅抑制に必要な台数のダンパーを配置することが難しいという問題があった。

 そこで、大成建設は、高層住宅に適した地震対策構法のTASS-Flex FRAMEを2016年に開発し、2017年に大型振動模型実験による性能確認を経て、東京都品川区で開発中のRC造高層住宅に初適用した。

 TASS-Flex FRAMEは、高強度・小断面の部材で構築された柔軟な架構が免震構造のように地震の揺れを受け流すとともに、連層壁がオイルダンパーのエネルギー吸収効率を増幅する。TASS-Flex FRAMEの解析結果では、巨大地震が発生した場合に、建物頂部の揺れ幅を70センチから50センチへと減らせ、耐震性能の向上が図れることが分かっている。さらに、性能の向上に伴い、柱や梁(はり)を小規模化することで、対象の施設に大きな開口を設けて優れた眺望を実現する。

「TASS-Flex FRAME」の架構のイメージパース 出典:大成建設プレスリリース

 加えて、建物中央部における吹抜け空間の周囲に連層壁とオイルダンパーを集約配置していることから、それ以外の柱や梁への補強は不要なため、高層住宅の建築計画への影響を最小限に留め、居住空間の有効面積を最大限確保することが可能。

 また、新構法を導入した建物自身が柔軟に変形することができるため、免震建物のように免震層※2や特殊な装置を必要としない他、連層壁によりオイルダンパーのエネルギー吸収効率を高めることで、オイルダンパーの台数を、従来の制振システムを用いた建物の半分程度とした場合でも高い耐震性能を得られる。そのため、同等の性能を持つ免震・制振建物よりも安価に長周期地震動対策を行える。

※2 免震層:地震の揺れが建物に直接伝わらないよう建物下部に設けられる空間。

「TASS-Flex FRAME」を初適用する建物の概要 出典:大成建設プレスリリース

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