BIMとFMの差異は扱うオブジェクトの違いだけではない。柴田氏は「FMのデータを実際のリアルな情報と位置付けると、BIMを使ったデジタル情報はバーチャル情報と言える」とし、FMのステージでこれを分析する際には、リアル情報とバーチャル情報の間で比較検討が必要と語る。
FMでは、実際の建物からデータを収集し、リアルな情報として使う。これに対してBIMは、蓄積されたデジタルデータから建物を情報化するいわばバーチャルな情報。最終的には双方とも統計的な評価モデルが作成されるが、「バーチャルな情報として建物評価もしくは将来の予測データがあるとなれば、リアルな情報はその通りに行くとはかぎらない。そこにギャップが生まれる」(柴田氏)。このため、双方を比較検討しながら、ギャップを埋めて、修正・調整する作業が生じる。
BIMのデータをFM領域で活用するには、データベース化によるデータ整理から始まり、その後に施設の分析を経て、結果を得る。分析にはAIも活用されるが、多くのステップを踏み、連携にはITツールも不可欠だ。FMシステムの統合FMプラットフォームであるFM-Integrationは、BIMとの連携をスムーズに行うのに役立つ。
FMシステムでは、これまでFMの各ステージで利用できる独立したパッケージ製品やソリューションを開発してリリースしてきた。従来のBIM連携ソリューションは、これらのパッケージ製品や仕組み、ソリューションなどをつなぎ、連携フローとして利用できるようにしたものだ。
対してFM-Integrationは、バラバラに動いていた各ソフトの機能を同一のプラットフォーム上に統合し、連携して機能するようにしている。
FM-Integrationでは、BIMの国際標準データ形式の「IFC(Industry Foundation Classes)」を使ってBIMのデータを扱う。さらに、IoT連携では「BEMS(Building and Energy Management System)」の情報や点検用ドローンのデータともリンクする。
FM-Integrationの連携機能としては、「アクセス機能」「情報機能」「連携機能」の3つが用意されている。
・アクセス連携:FMを利用する各ユーザーに対して、立場・役割に応じた情報を提供する機能。施設のオーナーに対しては、資産、LCC(Life Cycle Cost)の推移、工事履歴など。
・情報連携:BIMデータに加え、既存のデータベースや表計算、CADなどのデータ、写真などの情報を取り込み連携する機能。
・機能連携:施設の台帳管理機能、ビュワー、長期修繕、図面管理など、FMの業務で活用する機能(2020年10月時点で搭載済み)。今後、点検管理、施設予約、資産管理、保全管理などの機能を追加予定。
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