これまで、一般的なAGVが自律走行を行うには、事前に一度走行させて、搬送経路用の環境マップを作成する必要があった。しかし、工事現場では工事の進捗に応じてレイアウトが変化するため、そのたびに事前走行させなければならず、負担となっていた。こういった問題を解消する自律搬送システムを大林組は開発した。
大林組は、自律走行するAGV(Automatic Guided Vehicle、無人搬送車)を複数台連携することで工事現場の規模を問わず使える自律搬送システムを開発したことを2021年10月11日に発表した。
同社が2015年に開発した低床式AGVは、小型かつ軽量で、資材を積載した状態で工事用の仮設エレベーターに乗降するため、資材の載せ替えをせずに資材ヤードから搬送先まで一貫した搬送が可能。そして、従来は3〜4人の作業員で運んでいた資材をオペレーター1人で安全に運べる。
上記の低床式AGVをさらに効率化するため、米国の独立研究機関SRI Internationalとともに、搬送先と経由地の座標を指定することで、障害物を回避しつつ搬送先まで走行する自律搬送システムを追加した。さらに、複数台の低床式AGVを連携させることで、仮設エレベーターへの乗降も制御し、無駄な待ち時間や昇降回数を減らせる。
具体的には、今回のシステムは、搬送先と経由地を座標で指定するだけで、上部センサーヘッドのステレオカメラが搬送経路の要所に設置した2Dマーカーを読み取り、自己位置を検出し自律走行する。走行中に、LiDAR(レーザーセンサー)が搬送経路上の障害物を検知し迂回(うかい)するため、常時状況が変わる建設現場でも安全に使える。また、設置した2Dマーカーの座標データを変更するだけで、搬送経路の変更に即座に対応するため事前走行が不要。
そして、複数階での搬送では、低床式AGVが1台ずつ仮設エレベーターに乗車・昇降するように制御し、昇降階それぞれのエレベーター前に待機場所を設けることで3台を連携して稼働させられる。加えて、各機がすれ違える場所さえ設ければ、建設現場の規模や資材量に応じて、台数を追加可能。安全性に関して、自律搬送システムは端末を通じて稼働状況を監視するため、オペレーター1人で、使用する低床式AGVの稼働状況を確かめられる。
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