三井不動産と大林組は、AGV(無人搬送車)とレーザーセンサーを活用し、フロア内の移動だけでなく、階の移動も可能にする建設資材を自動搬送するロボットの開発に着手した。既に試作機の動作確認が済んでおり、2019年には千葉県船橋市で計画されている物流施設の新築工事で実証試験を行う。
三井不動産と大林組は共同で、資材などを自動搬送するシステムの開発に着手した。試作機の製作および動作確認は完了しており、2019年には三井不動産が建築主で大林組が施工する「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)船橋II新築工事」で実証実験を行う。
開発中の自動搬送システムは、搬送作業の省力化・省人化を目的に、大林組が2015年に開発した低床式AGV(Auto Guided Vehicle)をベースにしている。この機体はシンプルでコンパクトな形状なため、機体全体が資機材の下に完全に入り、積載したまま工事用の仮設エレベーターに乗り込むことができる。今回の改良では、新たにカメラ2台とレーザーセンサーを搭載し、資材の自動探索やエレベーターの自動呼出しなども可能にした。
自動搬送の手順は、まず形状と色を統一した専用パレットに資材を積載すると、AGVはパレット探索用とパレット識別用の2つのカメラを用いて専用パレットを認識。パレット探索用カメラは収納式で、資材ヤードでパレットを探すときにだけ立ち上げて使用する。
パレットを識別後は、資材パレットの下に潜り込み、荷物を積載。レーザーセンサーで周囲環境と自己位置を認識し、資材ヤードから目的地まで搬送して、到着後は自動で荷を下ろす。この機体では、従来の自動運転で行っていた誘導線や磁気テープを床に貼って軌道を設定し、その経路上を走行させるという作業が不要になる。
エレベーターの呼び出しは、仮設エレベーターを操作するオペレーターに対して、専用タブレットを介し、現在階と行先階を伝えてエレベーターを呼び出す。同一フロアの水平移動はAGVが自動で行うため、エレベーター用のオペレーター1人がいれば、複数台数の上下移動の管理が行える。エレベーターへは自動で乗り降りするため、建設現場全体の資材搬送の自動化が実現する。
三井不動産は今後、システムの開発を進め、オフィスビルや物流倉庫などの新築案件で標準採用を目指す。さらにゴミの自動搬送など、竣工後の建物での応用も検討していく。
大林組では、システム開発で得られたノウハウを生かし、高層ビルなど大規模新築工事での夜間の自動搬送を可能にし、さらなる省人化を図っていくとしている。
実験が予定されているMFLP船橋IIは、船橋オートレース場跡地の一部に建設する物流施設。プロジェクトでは物流棟だけでなく、従業員や近隣住民が利用できるカフェテリアや託児所の入る多目的棟、敷地面積約2万m2の防災機能を有する緑地も整備する。
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