今、日本国内のリテールおよびホテルマーケットは、新型コロナウイルスの感染拡大により需要が激減。シービーアールイーによれば、インバウンド需要の復調が見込めない中、マーケットの今後の回復は国内需要が鍵を握るという。
事業用不動産サービスを提供するシービーアールイー(CBRE)は2021年9月30日、国内ホテル市場の見通しについてまとめたレポート「日本のリテール&ホテルマーケット回復への道――鍵となるのは国内需要」を発表した。
同社の調査によれば、日本国内のリテールおよびホテルマーケットは、新型コロナウイルスの感染拡大による営業・外出の自粛、県をまたいだ移動の抑制、インバウンド需要の消滅などにより需要が激減し、甚大な影響を受けているという。
Figure1は、2021年9月時点の各国の入国規制レベルを示しており、日本は5段階のうち一番厳しい「国境閉鎖」となっている。入国制限の緩和は慎重に進める必要があり、解除までには一定の時間を要する可能性が高いとしている。
訪日外客数は2012年まで年間1000万人を下回っていたが、2018年に初めて3000万人を超えた。日本のリテールおよびホテルマーケットの需要の増加をけん引し、賃料の上昇や稼働率の向上が見られた。一方、日本人を中心とする「国内需要」が双方の需要を下支えしており、当面の需要を支えることになるという。
Figure2〜4は、主要地域における国内需要層の割合を、人口、小売売上高、宿泊者数から算出したもので、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年のデータを参考にしている。
Figure2では、人口とインバウンド数を合計した人数を潜在的な顧客の総体と見なし、そのうち人口の占める割合を示す。Figure3とFigure4は国内需要の割合を直接的に示す。
これらによると、リテールマーケットの国内需要層の割合は95.4%、宿泊マーケットの国内需要層の割合は90.7%で、主要地域より相対的に高く、回復力を有すると思われる。
Figure 5では、政府による各種給付金支給や、緊急事態宣言などによる消費抑制により、2020年の家計貯蓄額が前年の6.9兆円から36.0兆円に膨らんだ。この一部が、人流再開後、消費の単価を上げた、少しぜいたくな消費や観光という形で表れやすいと考えられるとしている。
これらから、双方の事業者は、インバウンド需要の回復まで、 国内需要を喚起しようとしている。主要なリテールエリアにおける路面店舗の出店やエリア内移転、リゾート開発や都市型のラグジュアリーホテルの出店計画が進行しており、いずれもブランド力を磨くことが回復の鍵となるとCBREは見ているという。
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