BIMを使うことで、プロジェクトの運営方法には豊かなバリエーションが生まれる。国土交通省の建築BIM推進会議が策定した標準ガイドラインでも、既にさまざまなプロジェクトの運営方法が示されている。各プロジェクトに応じた形でBIM確認を考えると、仮に一体的に設計・施工を行う「DB(デザインビルド)」として施工段階の情報も網羅した情報密度の高い設計が可能な場合は、建築確認申請の段階でかなり細かな情報も扱えるようになる。そうしたさまざまな状況に応じてBIM確認のあり方も違って良いのではないだろうか?と武藤氏は投げかける。
もう一つの方向性としては、工場生産と連携した建築生産にまで連携の範囲を広げる「建築生産技術と連携したBIM建築確認手法の開発」がある。武藤氏によれば、在来木造工法やCLT、RMなど、工業化した建築生産工程とBIM建築確認を連携させることで、高品質な建築とより簡易的な建築確認が実現するのではないかという案も出ているという。さらに、自動審査やデジタル手続きそのものといった周辺環境の整備なども検討していく必要があるだろう。
紙の図書と電磁的記録を比較すると、ペーパーレスを含め、紙の図書は「目で見えるもの」であり目視で確認するから「信用に足る」と言う人が多い。では、データはどうかというと、電子記録による手続きでは、ビュワーあるいはプログラムで見るデータ自体が確かなものかどうかが問われる。ハンコなどはアナログの象徴とも言われているが、押した印影の向きや擦れ具合を目で確認しているわけで。こうした物理的メディアで確認できることが安心につながる。従って物理的なものがない電子記録は、より信用の代替となるものを作らなければならない。
改めて現在の社会情勢を俯瞰したときに、建築業界のさまざまな主体でBIMの経験が高まってきている。BIMが普及し始めた頃は、BIMを使っていることそのものが他社差別化で、競争力の源泉にもなっていた。しかし、各社がBIMに取り組むようになると状況は変わり、徐々に競争疲れのような状況となって各社の自己流BIMが乱立。結果、連携が阻害されて全体の生産性を削ぐような状況を招いている。同時に、情報化普及への対応が遅れた行政手続きも、社会の生産性を削ぐ原因となっていることが指摘されている。
こうした状況に対し、建築研究所では、使える人にとっては便利な「あれば便利」な技術だったBIMから、皆が使える「なくてはならない」技術としてのBIMへ、パラダイムシフトさせていく必要があると認識している。そして、こうした「協調」を意識したスタンスのもとで研究を進めている建築研究所は、その協調領域の基盤整備にもなり得る行政手続きを中心に、「BIMがつながるような研究」を一層推進させていく方針を示している。
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