日本郵政の本社移転で試された、BIMによるオフィスビルのファシリティマネジメントBIMの可能性「BIM×FM」(1/3 ページ)

日本郵政グループ本社は2018年9月、霞が関から、大正時代から遁信省があったゆかりのある大手町へと、50年ぶりに本社機能を移転した。グループ社員6000人が一度に移転する一大プロジェクトで、最近のBIM(Building Information Modeling)のトレンドとなっているBIMモデルを活用したFM(ファシリティマネジメント)も試みられた。

» 2018年10月12日 13時00分 公開
[石原忍BUILT]

 構造システムグループが主催する「建築とITのフォーラム」が2018年10月10日、東京・千代田区のソラシティホールで開催された。

 当日のアジェンダから、日本郵政グループの本社移転プロジェクトで、BIMをベースに施設の運用管理「FM(ファシリティマネジメント)」のシステム構築を目指した「JP日本郵政グループ本社移転プロジェクト」の事例紹介を取り上げる。登壇者は、日本郵政 総務部 部付部長 本社移転推進室 室長・斎藤隆司氏。

大手町最大規模のオフィスビルにグループ本社機能を統合

日本郵政・斎藤室長

 日本郵政グループの本社移転プロジェクトは、グループ各社が霞が関周辺の8拠点に分散されており、非効率化を招いている状況を修正すべく立案。グループにとって、なじみが深い大手町に新築されたオフィスビル「大手町プレイス」に本社機能を集約した。2棟あるうちの「ウエストタワー」には、日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険のグループ社員6000人が移転する。

 大手町プレイスは、総延べ床面積35万4000m2(平方メートル)で、エリア最大規模のオフィス面積を誇る2棟から成るオフィスビル。35階建てのウエストタワーには郵政グループやNTT、32階建てのイーストタワーには財務省が入る。設計は日本設計が担当し、施工はウエストタワーが竹中工務店、イーストタワーは大林組がそれぞれ担当し、着工は2015年5月で、竣工は2018年7月。事務所の移転は2018年9月からスタートし、同年11月末までにゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の移転が完了する。

「大手町プレイス」の位置図と、神田方向へ抜ける「竜閑さくら橋」
「大手町プレイス」内の日本郵政グループの主なフロア構成

 プロジェクト自体は、2007年から本格的に検討が始まり、2013年に正式決定。本社機能の分散をはじめ、グループ間の交流減少、役所的業務からのイノベーション、グループ共有の会議室の必要性など、これまで課題となっていた部分をオフィス移転を契機に改善を目指した。

 日本郵政グループでは、これらの大手町本社移転に伴うワークスタイル改革を「大手町JP流儀」と称して、人と人とを結ぶオフィスビルの構築を目指した。具体的なプランでは、2階に地域住民にも開放する「ゆうてまち(ゆうせい+おおてまち)保育所」、地域とのコミュニケーションの場「会議ゾーン(JP Session)」、14階に郵便番号をイメージした「社外との会議室」と「食堂(JPキッチン)」、高層部の22階には日本近代郵便の父・前島密氏をイメージした大会議室「前島ホール」を整備した。

 同時に若手社員26人が、「大手町JP流儀ココロエ」として、全社員の意識改革につながるさまざまな取り組みを行った。

 大きな成果となったのは、ペーパーレス化で、かつて社内で蓄積された書類を積み上げると1万m(メートル)ほどの高さに達したというが、新社屋で仕分けや管理ルールを見直したことで、紙削減を実現。日本郵政で83.2%、日本郵便で86.5%、ゆうちょ銀行で70.6%、かんぽ生命保険で81.7%の削減率を達成した。

 他にも、移転ニュース配信による社内周知、オフィス内装に郵便を象徴する壁紙やサインの導入も、若手社員のアイデアを積極的に取り入れ進められたという。

郵政フロアのオフィス内装
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