清水建設は、千葉県市原市内に確保した約3000平方メートルの敷地で開発を進めていたカーテンウォールの実大性能試験設備を2021年9月下旬に完成させた。今後は、カーテンウォールの実大性能試験設備を活用し、建物規模を問わず、カーテンウォールの品質を最適化することでコスト競争力を高め、案件受注につなげていく。また、将来的には、蓄積する試験データを用いて、性能試験をデジタル化する見通しだ。
清水建設は、国内外で計画されている高層ビル案件の受注に向け、千葉県市原市内に確保した約3000平方メートルの敷地で、最大で上空500メートルの過酷な気象環境を再現し、外装カーテンウォールの品質と経済性を調べられる実大性能試験装置の整備に着手したことを2021年8月23日に発表した。
高層ビル建設費のうち、外装カーテンウォールの製作費は、建物の形状により異なるが、全体の約5%程度を占めるとされている。そして、高層階に設置されるカーテンウォールは、これまで実大性能試験を実施できる施設が、大手建設会社やサッシと硝子の各メーカーにも無かったことから、余裕を持たせた安全率を適用した設計になっていた。
そこで清水建設は、カーテンウォール品質の適正化やコストダウン、CO2削減を目的に、実大性能試験装置の整備に着手した。実大性能試験装置は、建物2階分に相当する9メートル角の実大カーテンウォールを設置する鉄骨躯体、カーテンウォール全面に風圧をかける圧力箱、送風管を介して圧力箱内の圧力を調整する2台の大型送風機および格納庫、制御室、鉄骨躯体用の走行レールで構成される。
性能試験時には、カーテンウォールを設置した鉄骨躯体と圧力箱を密着させ、圧力箱内部の圧力がカーテンウォール全面に作用する仕組みになっている。圧力を調整する2台の大型送風機により再現できる風圧は、静的(加圧か減圧)には1秒当たり189メートルの風速となる風圧±2万パスカルで、脈的(加圧と減圧の繰り返し)には10〜12秒の周期で1秒当たり164メートルの風速となる±1.5万パスカル。
上記の数値は、上空450〜500メートル程度の風環境に値する。さらに、加・減圧に併せて圧力箱内の設備からカーテンウォール1平方メートル当たり毎分8リットルの水を散水することで、上空の過酷な気象条件を再現可能。加えて、鉄骨躯体の中間層に位置する床躯体を水平方向にスライドすることで、地震や強風時に発生する高層ビルの層間変形を再現するため、カーテンウォールの変形追従性能も確かめられる。
カーテンウォール1試験体当たりの試験期間は、試験体の製作期間を除き、2カ月程度。試験では、過酷な気象条件を再現して繰り返し試験体に負荷をかけることで、カーテンウォールを構成するガラスやアルミフレーム、ガスケット(ゴム製止水部材)、シーリング材、固定用の金具(ファスナー)、レールなど、あらゆる部材に求められる諸性能を検証する。
試験体に負荷をかける際に生じる試験体の挙動は、最新のモーションキャプチャーシステムによりリアルタイムにモニタリングを行う。また、外装に関わる各分野の専門家で構成するチームが、検証で得られたデータを解析し、カーテンウォールの耐風圧、水密性、気密性、変形追従性を満たす仕様を決める。
CO2削減効果に関して、カーテンウォールの構成部材であるアルミ量を減らすことで、カーテンウォール製造時のCO2を減少させられる。具体的には、アルミニウムを1キロ低減することで約2.12キロのCO2削減効果がある。そして、1ユニット当たり、10キロのアルミをカットすると、高層ビルのように2000ユニットもあるような建物では、4万2400キロのCO2を軽減する。
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