奥村組とアクティオは、マスコンクリートの温度によるひび割れを抑制する工法の1つとして、パイプクリーニングで、クーリング水の流量・流方向を自動で制御し、コンクリート温度を管理目標値に近づけるシステムを開発した。今後、両社は、温度によるひび割れの発生しやすい断面の大きな壁・柱部へも新システムの適用を広げる方針を示している。
奥村組とアクティオは、マスコンクリートの温度によるひび割れを抑制する工法の1つとして、パイプクリーニングで、クーリング水の流量・流方向を自動で制御し、コンクリート温度の変化にも対応した新工法を開発したことを2021年6月22日に発表した。
マスコンクリートの施工では、構造物の性能と機能を確保するために、セメントの水和熱によるひび割れに対処する必要がある。対策の1つであるパイプクーリングは、コンクリート内部に配置したパイプにクーリング水を一定期間に適量流すことで、コンクリートを冷却する。
しかし、パイプクーリングは、コンクリート温度の変化に対応しておらず、配置する1系統あたりのパイプ延長が長いとコンクリートの水和熱によりパイプ内を流れるクーリング水の温度が上昇し、パイプの出口側では冷却効果が低下することから、十分に機能しない場合がある。
そこで、奥村組とアクティオはコンクリート温度を一定に保つシステムを開発した。新システムは、あらかじめ、FEM(Finite Element Method、有限要素法)温度応力解析により算出したコンクリートの温度履歴を基に、管理目標値を設定する。次に、パイプクーリング実施中は、パイプ近傍でコンクリート温度をリアルタイムにモニタリングしつつ、管理目標値に近づけるようにPID制御でクーリング水の流量を自動調整し、コンクリート温度の管理を行う。
パイプクーリングを複数の系統で実施する場合は、モニタリングを行うメイン系統の流量をサブ系統に再現するように制御する。
また、クーリング水によるコンクリートの冷却を着実に行うため、クーリングパイプの入口側と出口側のコンクリート温度差が所定値以上になると、クーリング水の流方向を自動で変更(正送もしくは逆送に切り替え)してコンクリートの温度を整える。
両社は、茨城県つくば市の奥村組技術研究所で、呼び径1インチで1系統28メートルのクーリングパイプを設置した1.2(幅)×7.0(奥行き)×1.2(高さ)メートルの型枠内にコンクリートを打設し、新システムを用いて、パイプクーリングを実施し、効果を検証した。
検証では、コンクリート温度の管理目標値を設定して、クーリング流量を自動調整した結果、コンクリート温度の実測値を管理目標値に近づけ、温度の制御を実現。さらに、クーリング水の流す方向を変更(正送⇔逆送)することで、入口側と出口側のコンクリート温度差を2度以内にした。
このことから、コンクリート温度で、事前の解析により算出した温度履歴(解析値)と実験における温度履歴(実測値)の差を絶対値の平均値で1.3度に制御可能なことが分かった。
奥村組は既に、千葉県習志野市に位置する道路橋下部工事のフーチングコンクリートで、新システムを適用している。現場では、新システムにより、コンクリート温度を計画通り管理し、ひび割れの発生を抑制した。
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