大成建設が流動化コンクリート開発、材料コストを2割カット生産性向上

大成建設は一般的な生コンに粉末パックの流動化剤・増粘剤を混ぜるだけで作成できる流動化コンクリート「T‐エルクリート」を開発した。2017年9月末から型枠工事の現場で実際に導入されており、2018年4月には同社の研究センターでその有効性が実証された。

» 2018年04月11日 06時00分 公開
[石原忍BUILT]

 大成建設は2018年4月9日、一般的に使われているJIS規格のコンクリートに、粉末パックの流動化剤・増粘剤を添加するだけで流動性を向上させ、高密度配筋の充てんにも対応する流動化コンクリート「T‐エルクリート」を開発し、有効性を確認したと発表した。大臣認定が不要なJIS規格コンクリートをベースに使うため、多様な条件の建設工事に活用でき、従来の流動性の高いコンクリートと比較して材料コストを低減。調合次第で最大1m3(立方メートル)あたり2割程度のコストカットを可能にするという。

コンクリート仕様比較表 中央が「T‐エルクリート」

 一般的に鉄筋コンクリートの構造物は、型枠内部にコンクリートを充てんして構造体を構築するため、複雑な形状や鉄筋量の多い場合は、流動性の高いコンクリートを使用することが効果的とされている。しかし、流動性の高いコンクリートを建築工事に使用する際は、建築基準法の大臣認定が必要なため、通常申請から認可まで、数カ月を要する。また、コンクリート自体のコストも高く、型枠側圧が大きく作用するため、漏れのない型枠工事や圧送時の圧力が大きくなるため、ポンプへの負担が大きいなどの課題があった。

 大成建設はこれらの課題を踏まえ、建設現場でコンクリートの打込み直前に計量不要な粉末の流動化剤と増粘剤を添加するだけで、従来の中流動コンクリートと同等のスランプフロー45〜55cmを確保できるまでに流動化したT‐エルクリートを開発。同社の技術センター内の実験施設で、新設壁、増打壁、柱などの約300m3に適用し、その有効性を実証した。

「T‐エルクリート」の製造・使用過程

 T‐エルクリートは、JIS規格コンクリートの打込み直前に、計量不要な粉末パックの流動化剤・増粘剤をミキサー車に投入して、混合することで、高い流動性を保持する。コンクリートの材料分離を生じることなく、良好なポンプ圧送性と型枠への充てん性が確保可能なため、複雑な形状や高密度配筋など、充てんが困難な部位への使用でも、不良リスクが回避できる。

 この技術では、あらかじめ定量の流動化剤・増粘剤をパッキングした粉末パックを使用するため、従来の液体混和剤の使用時に必須だった現場計量が不要となる。水セメント比を変化させず、流動性のみを一時的に高めるため、強度に影響を及ぼさずに、充てんが困難な部位など、必要な箇所にのみ適用ができる。そのため、現場での状況に応じて作業の手間を省け、コンクリート工事の生産性を向上させる。

ミキサー車のホッパー(上部投入口)へ流動化剤・増粘剤を投入

 大成建設では、T‐エルクリートの技術を高密度配筋部や壁・柱の脚部などを対象に、コストを抑え、充てん不良リスクを回避する新技術として主に建築工事に広く展開するとともに、将来増加が見込まれるリニューアル工事での増打ち・後打ちの壁・柱、土木工事に対しても展開していくとしている。

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