建機の位置情報や法面の変状をリアルタイムに検出、GNSSの欠点を補う清水建設の測位システムICT施工

清水建設は、GNSSを活用し、土木工事での建機の位置情報や法面の地盤変位を高精度でリアルタイムに検出する新たな測位システムを開発した。新システムでは、GNSSの欠点だった急峻な山肌のある現場でも、測位に必要な衛星数を確保して、高精度の測位が可能になる。

» 2021年08月09日 08時00分 公開
[BUILT]

 清水建設は、ICT施工の推進に向け、建設機械の位置情報や法面などの地盤変位をリアルタイムに検出するGNSS(全球測位衛星システム)を用いた新たな測位システムを開発したと2021年7月2日に公表した。開発にあたっては、東京海洋大学 久保信明教授の指導を得て、高須知二氏(同大産学連携研究員)が実用化したGNSS測位を行うためのオープンソースプログラム「RTKLIBソフトウェア」をベースにアルゴリズムを構築した。

仰角45度程度までの空間に障害物があっても高精度測位が可能

 大規模な土木現場では、GNSSを活用した高精度な測位システムが活用されている。しかし、測位システムは、同一種の測位衛星4〜5ペア以上からの測位衛星信号を受信する必要があり、上空視界が限られると、十分な衛星数が確保できないケースが少なくない。さらに、反射信号や衛星配置などによる誤差を嫌うため、オープンスカイでの適用に限られている。

土木現場の限られた空間にも対応する新測位システム Photo by 写真AC

 新たなGNSS測位システムは、市販のアンテナ、受信機、解析装置、RTK方式のアルゴリズムで構成。特長は、仰角45度程度までの空間に障害物がある環境下でも、測位に必要な衛星数を確保し、高精度測位を継続できる点。これを可能にしたのは、国内外の測位衛星が発信する異なる周波数の測位衛星信号を同一の衛星信号と見なして処理するアルゴリズムを確立したことによる。その結果、ある時点で捕捉(交信)していた測位衛星が見えなくなっても、次に現れる衛星を機種に関わらず、瞬時に解析へ取り込むことで、継続測位ができるようになった。

 また、アルゴリズムをカスタマイズすれば、急峻な山肌を背負う土木現場でも建機の位置情報をリアルタイムで取得や法面の動態観測などが行えるようになる。実証実験では、オープンスカイ環境下での従来のGNSS測位システムとほぼ同等の測位精度が得られることを確認したという。

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