日本建築ドローン協会(JADA)の本橋健司氏は、JADAが日本建築防災協会や神戸大学らと共同で開発を進めてきた建物外壁点検用ドローンと、JADAが開催しているドローン飛行のための安全教育講習会で、共同研究に寄与できると明言する。
JADAのドローン開発は、2020年度のNEDO事業「規制の精緻化に向けたデジタル技術の開発/ドローン等を活用した建築物の外壁の定期調査に係る技術開発」に基づく事業。高層建築物の点検にドローンを活用すべく検討を進めてきた。開発中の機体は「Visual SLAM(自己位置推定)」や2点係留装置ガイドなど、外壁点検に適した特徴を多数備えている。本橋氏は「外壁点検用ドローンとしては日本で最先端に位置する」と評価する。JADAが定期的に実施している「建築ドローン安全教育講習会」は、受講・修了することでドローン飛行の安全管理に必須となる情報を得られるという。
日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の岩田拡也氏は、共同研究に参加することが人材育成と建築分野への人材の橋渡しになるとした。
JUIDAはドローン産業・業界を大きく発展させるために設立された協会。全国に250校近くあるスクールで、ドローンを飛ばせる人材を育成している。「JUIDAスクールでドローンの操縦技能と安全運航管理の知識を身に着けたパイロットを建築分野につなげることで、ドローンパイロットの活躍の場を創出できる。そのことは、建築分野の人手不足の解消にもつながる」と期待を示した。
政府が2022年度をめどに実現を目指す、“レベル4の飛行(有人地帯における補助者なし目視外飛行)”については、登壇者の議論は飛行時の安全・安心の確保に集中した。
石井氏は、「都市部を飛行するとなったとき、安全性の確保、住民の不安解消、交通管理者・道路管理者など関係者の理解促進、飛行空間の確保という点から無電柱化をどう進めるか」などの検討課題を提示。そのうえで、住民の不安解消には、「安全・安心が確保されること」が重要で、今回の共同研究は、その点でも意味があるとコメントした。「建築点検自体は、一般区民の方にはあまりなじみがない。ただし、防災性や耐震性といった観点で点検は必要。とくに高層建築物の点検にドローン技術を用いることのメリットは理解してもらえるのではないか」。
宮内氏は、今回の共同研究に関して、「4者が相互補完することで実際にレベル1から2への社会実装が進み、最終的にはレベル4へとつながっていく。そういう観点で、4者の連携は重要」と語った。
レベル4の飛行が実現した社会に関しては、「都市部で飛ばすことは、必ずその下に人がいてその上をドローンが飛ぶのが日常という世界になる。これは今後どんなにドローンの開発や技術レベルが上がっても変わらない。だから、都市での人とドローンが共生は不可欠となるため、今回のような共同研究を交えながら進めていきたい」と展望を示した。
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