「このようにして、従来なら熟練技術者が時間をかけて取り組むべき煩雑かつ膨大な作業を伴う設計業務で、今回はCIMモデルを活用して作業の自動化を目指すことになりました」。
開発を始めた当時、適用可能と考えられた各種の方法についてテストした結果、山田氏らは、まず3Dモデルを作成した後、VBAを用いてスライスマクロを実施し、堤体モデルを分割していく方法を選んだ。すなわち配合区分のソリッドモデルを作成し、これをリフト毎(標高毎)、ブロック毎(河川左右方向分割)、配合区分毎に分割して作業を進めたのである。最終的に、足羽川ダムの堤体モデルは、万を超えるソリッドに分割され、それぞれブロック名や標高などの情報が属性として付与された。
「続いて図面作成の自動化に取り掛かります。VBAで分割した図面を移動し、さらにソリッドを分解してサーフェスのモデルを作成。これを適切に移動することにより、200枚超の平面図や75枚もの各断面図間の整合性を取りながら、図面作成できます」。
一連の流れを山田氏らのチームは、VBA言語によってプログラミングを組み、図面作成の自動化を実現していった。さらに、このプログラムでは、分割の進行と同時に、配合区分や体積、位置、該当ブロックなどの属性情報もCSV形式で出力される。それぞれの属性情報を記した情報は、合計2万行以上も生成されることになる。
「続いてコンクリート数量の算出ですが、前述の通り、分割モデルの属性として体積などをCSV形式で出力しています。これにより、その後の数量計算へのデータ活用が容易になりました」。
現在、開発中の機能としては、ある配合のブロック別・標高別のコンクリート数量表、ブロック・標高毎の配合を示した図面、数量をまとめた表、そしてCIMモデル上にブロック名、標高、配合を設定することで、該当するソリッドの選択・表示が可能になる機能がある。これらさまざまな出力機能を利用することで、集計された数量の算出根拠も追えるようになるため、数量計算のブラックボックス化が防げるぐ。
「このCIMによる数量計算に関しては、コンクリート数量算出結果の精度検証も行っています。実は今回、自動計算と並行して従来通りの平均断面法による数量計算も実施したのです。最終的に両者の誤差は0.35%という結果になりました」。誤差は1%を切る結果となったわけだが、この0.35%の誤差の発生理由も確認済みだとしている。誤差が比較的大きい部分は、面積の計上方法が異なるためで、平均断面法による算定結果と、真値に近いCIMモデルとの差が大きく出た箇所なのである。さらに、この自動化による効率化の効果も既に検証されている。結果によると、自動化により、この作業で通常必要となる作業時間は約50%削減できたとのことだ。
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