難燃剤を使わない内装用の不燃木材、“ウォールナット”など広葉樹も表現可能に新建材

大林組と内外テクノスは、難燃剤を用いた不燃木材に対するデザインの制約や白華現象を解決する内装用の木質建材を開発した。新たな木質の内装材は、針葉樹に特殊なシート加工を施すことで、大臣認定を受けた不燃材料として利用することができる。

» 2021年05月31日 10時00分 公開
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 大林組はグループ会社の内外テクノスと共同で、木材をシート加工して不燃材料とした内装用木質建材「アルファティンバー」を2021年4月に開発し、内外テクノスを通じて一般向けの販売強化に努めている。

アルファティンバーの製造期間は、2〜3カ月から2〜3週間へ短縮

「アルファティンバー」の制作イメージ 出典:大林組、内外テクノス

 一般的に木材は、二酸化炭素の貯蔵や排出抑制といった環境負荷低減と森林保全に加え、その材質が持つ美しさや温かみ、心理面や健康面への影響など、多様な効果が得られることから多くの建物で利用されている。

 しかし、人が多く立ち寄る建築物では、建物の用途や規模に応じて建築基準法に基づく内装制限により、規定の試験をクリアした「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」を用いて内装を仕上げなくてはならない。そのため、可燃物の木材は、そのままでは内装材として使用できないために、難燃剤を含浸させた不燃木材などを使用するのが通例となっていた。

 だが、難燃剤を用いた不燃木材の問題点として、難燃剤が表面に溶け出し、木材表面を白く汚す“白華現象”が生じることがあった。また、難燃剤を含浸できる木材は細いストローを束ねたような導管を有する針葉樹(スギ、ヒノキなど)に限定され、デザインが画一的になってしまう懸念もあった。

 大林組と内外テクノスが開発したアルファティンバーは、基材となる針葉樹に特殊なアルミニウム箔複合シートを貼るだけで、一般不燃材料(大臣認定番号:NM-5116-1※1)として利用することができる。難燃剤も注入しないため、白華現象が無く、表面には保護と汚れ防止の塗装も施すので長期にわたり美観を保つ。シートの上には、家具などで人気が高い、ウォールナットやタモ、ホワイトアッシュなど広葉樹の天然木シート(ツキ板)を重ねられるので、デザインの幅も広がる。

※1 国土交通省「構造方法等の認定に係る帳簿」:ウレタン樹脂系塗装木質系単板・セルロース紙張アルミニウム合金はく張/スギ材 令和3年02月03日認定

貼り付けるだけでさまざまな樹種の採用が可能 出典:大林組、内外テクノス

 製造面でも従来の不燃木材は、難燃剤を注入してから徐々に乾燥させる必要があり、2〜3カ月を要したが、その点、アルファティンバーは複雑な工程が不要で、乾燥工程も要らないため、2〜3週間で済むという。

 また、難燃剤を機械で注入し、乾燥させる場合は、その期間が1〜2カ月に及ぶこともあり、大量の電力などのエネルギーを消費していることも課題だった。しかし、アルファティンバーは難燃剤の注入や長時間の乾燥工程が無いため、製造時のエネルギー消費量を削減でき、環境負荷の低減につながる。解体時には、表面のアルミニウム箔複合シートを剥(は)がすことで、木材のリサイクルが可能で森林資源の循環利用にも貢献する。

 今後、大林組と内外テクノスは、アルファティンバーの普及を通じて、デザイン性に富み、火災に強い安全かつ安心な木質空間創りと持続可能な開発目標(SDGs)を達成させるとしている。

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