2021年度の注力点としてゴドブ氏は、バーチャルなプラットフォームを利用して新分野に進出するとした。対象領域は、製造業に加えて、ライフサイエンス、インフラ&シティー関連を提示。この他、学生を含む教育分野へのアプローチとして、コラボレーションツールを活用したクラウド上でのイベント「ハッカソン」を示した。ダッソーのハッカソンは、2021年も8月16日〜9月20日の日程で開催を予定している。
都市・インフラの領域では、京都のけいはんな学研都市でのデジタルツイン構築例を紹介。「スマートけいはんなプロジェクト」と呼ばれるもので、NTT西日本、関西電力と関西電力送配電、シェアサイクルのスタートアップ企業オーシャンブルースマートとの連携で行われた。
154平方キロの広大なエリアに及ぶけいはんな地区は、関西文化学術研究都市として知られる。プロジェクトでは、その約3分の1にあたる中心地区をデジタルツイン化し、より住みやすい環境を構築するために、交通や配送の最適化、人の動きを効率化するためのデータを得た。
デジタルツイン化に際しては、ダッソー・システムズのインダストリー別ソリューション群の一つ、業界ごとのアプリケーション群「インダストリー・ソリューション・エクスペリエンス」のうち都市分野を対象にした「インクルーシブ・アーバン・フューチャー(包括的な都市の未来)」という概念に基づいてモデルを構築した。
具体的には、地形データをベースに、その上に地図データ、さらに3次元の建物データを重ねて街の形を作り、関西電力が設置する電柱の位置データも追加した。関西電力では、設置した電柱に宅配ボックスを取り付けることで、再配達を防ぎ、CO2排出の削減にもつながる取り組みを行っている。
NTT西日本は、プロジェクトでラストワンマイルのモビリティ実験を実施。けいはんな地区は、多くの研究施設が点在するエリアとその周辺の住宅地から成り、交通の便は良いとは言えない。とくに、バス通りから外れた公共交通機関の届かないラストワンマイルの場所へ移動するのは不便。
NTT西日本の実験では、エリア内に55カ所の電柱を乗降場所として、携帯アプリで乗り合い式のモビリティを気軽に呼べるようにした。
一方で、オーシャンブルースマートは、GPSを搭載したシェアサイクルを活用して、自転車利用したときの移動履歴を検証。プロジェクトの期間は約2カ月で、2000ほどの利用データが得られた。後にデータ分析によって、シェアサイクルの利用はJR「祝園(ほうその)」駅と、近鉄新祝園駅と住宅地の移動に使われることが多い実態を可視化することができた。最終的に分析データは、サイクルステーションの設置場所の検討に活用される。
ダッソー・システムズでは、2021年6月15日〜7月9日にオンラインで「3Dエクスペリエンスカンファレンス」の開催を予定している。参加には事前登録が必要だが、参加料は不要だ。
このカンファレンスでは、一般ユーザーの他、マネジャー、DXを担当するリーダーなど約4000人の参加を予定している。ダッソー・システムズでは、エンジニアや各業界担当の専門家が登壇し、参加者と直接コンタクトを取れる場も用意するとのことだ。業界別の分科会を開催する予定もあるので、参加者が担当する業務について、より深く最新の技術を得る機会にもなるだろう。
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