2020年に国交省が公募した「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」とは、策定された「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(2020年3月)に沿って、設計・施工などのプロセスを横断してBIMを活用する建築プロジェクトで、BIM導入の効果検証や課題分析などを試行的に行う施策である。当社は、モデル事業に選ばれなかったが、連携事業として子会社のフジタとともに、設計〜施工〜維持管理で、プロセスを横断してデータを一気通貫での活用に取り組んだ。仮想の建物ではあったが、BIMの活用において、当社のBIMの取り組みを最大限に発揮する絶好の機会となった。今回は前回に続き、大和ハウス工業の連携事業について、設計段階での具体的な手法を解説していく。
「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(以降、BIMガイドラインと称する)では、標準ワークフローに対して、形状と情報の詳細度に応じた業務区分(ステージ)を設定している。BIM業務では、従来のCADなどの作業とは異なり、さまざまな作業段階や精度のデータが混在し、複数の関係者が同時並行で作業することになるため、実務上の情報管理を円滑化する必要があるからである。
BIMガイドラインでは、7つの業務区分(ステージ)を設定しているが、大和ハウスとしては、その考え方に少し手を加えているので説明しておく。我々は、S2〜S4までの設計作業についての定義を少し変更した。BIMガイドラインではS4(ステージ4)を実施設計2としているが、当社ではS4生産設計と考えた。
理由としては、設計〜施工のBIM連携のためにも、実施設計の終了から、着工までの期間にある程度の期間が必要なためである。S4では、施工業者の決定や、資材発注の準備、実行予算の作成、施工計画の作成、施工図の作成など、情報の流れが設計から工事に切り替わるタイミングで起こる多様なことに対応している。ここでしっかりと設計から施工に情報を受け渡すことが重要である。
業務区分(ステージ)の考え方は、BIM業務の流れを分析する上で、無くてはならないものだ。
共通データ環境(CDE)と位置付けるBIM 360に下記のようにフォルダを構成し、50人以上に上る関係者全員のアクセス権限を付与し、プロジェクトを進めた。この情報のマネジメントこそが、BIM業務の核である。
共通データ環境の中で、S2の基本設計段階では、意匠の一般図となるRevitのモデルと図面で、下図のように、指摘事項の機能を使ってデザインレビューを行っている。
このような仕組みを使って、どのような取り組みを行ったのか、ステージの順に説明してゆく。
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