空き家のデータベースサービスを運営する空き家活用と衛星とドローンで取得した写真やAI、区画技術を用いたサービスを展開するサグリは、空き家の発見を効率化するアプリケーションの開発を進めている。
空き家のデータベースサービスを運営する空き家活用と耕作放棄地検出アプリ「ACTABA」を展開するサグリは2020年12月21日、東京都世田谷区の世田谷区役所で、ドローンによるリモートセンシング技術を活用した空き家調査の実証実験を行った。
会場では、空き家活用 代表取締役 和田貴充氏とサグリ 代表取締役 坪井俊輔氏が、各社の事業概要やドローンを用いた空き家調査の内容と開始した経緯を説明した。
空き家活用は、2014年設立の会社で、2018年8月に空き家物件検索サイト「AKIDAS」のサービス提供を開始している。AKIDASは、未流通の空き家に関する情報を掲載したデータベースで、個人所有の空き家についての情報を3万5000件以上掲載しており、現在204社で利用されている。同サイトの利用料は月額1万円(税別)で、掲載された空き家物件の住所や状態が分かる写真など詳細な情報を入手する際には、別途課金が求められる。
AKIDASに掲載する空き家を探す際には、空き家活用の調査員が独自のアプリケーションを使いつつ、徒歩と自転車を使用し探索していたため、手間と時間がかかっていた。そこで、空き家活用は、サグリと共同で、ドローンのセンシング技術や衛生写真、AI技術を用いて、空き家が多いエリアを特定する手法の開発に踏み切った。同手法の開発事業は、東京都の「2021年 民間空き家対策東京モデル事業支援事業」に採択されており、世田谷区役所での実証実験も同手法開発の一環として行った。
今回の実験では、世田谷区役所の第1庁舎屋上から、DJI製ドローン「Matrice210RTK 赤外線カメラ・可視光カメラ同時運用可能モデル」を高度30メートル、50メートル、100メートル、150メートル未満の上空まで上昇させ、各高度で360度旋回させながら赤外線カメラで周囲1〜2キロを撮影し、得られた熱赤外線画像から空き家の存在するエリアを絞り込めるかを検証した。ドローンの操縦はテラ・ラボが担った。同実験は、世田谷区の他、墨田区、立川市、奥多摩町でも実施された。
国内の空き家に関する問題について、空き家活用の和田氏は、「野村総合研究所が発表したデータによれば、空き家数は2033年に2100万戸になると見込んでおり、総務省が2018年に公表した総住宅数が約6240万7000戸であったことを踏まえると、全住宅のうち3件に1件が空き家になる未来が待っている。とくに東京都や大阪府などの首都圏で空き家が増加傾向だ。空き家が増えている原因は、所有者が空き家の処理方法を理解していないことと、空き家を利活用したい不動産会社が所有者にコンタクトできないことだと考えている」と語った。
さらに、「空き家問題を解決するために、空き家活用は、既に展開しているAKIDASや空き家の情報サイト“空き家活用Lab”を利用する。また、空き家所有者に、地方自治体と連携して空き家の利活用方法を提案するとともに、空き家のオーナーと利用希望者をマッチングするプラットフォームの構築を目指す」と補足した。
続けて、「当社では、2033年に戸建て空き家市場の規模が22兆3000億円になると想定しており、マーケティングの伸長に伴いAKIDASと空き家のマッチングプラットフォームを利用するユーザーが増えると見込んでいる。将来的に、AKIDASは12万社の不動産会社が月に7万円利用し年換算で1000億円の利益を生むサービスにすることを目標にし、マッチングプラットフォームは不動産会社やリフォーム会社など計96万社が月に5万円使用して年換算で5760億円の収益が得られるプラットフォームにしたいと考えている」と今後のビジョンを述べた。
なお、空き家のマッチングプラットフォームは2021年1月にサービスの提供を開始する予定だ。
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