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» 2020年12月14日 09時00分 公開

大林組らが「ドライ低NOx水素専焼ガスタービン」の技術実証試験に成功産業動向

大林組らは、川崎重工業が開発した燃焼技術「マイクロミックス燃焼」を用いた「ドライ低NOx水素専焼ガスタービン」を開発し、燃焼速度が速い水素燃焼で火炎の逆流を抑えながらいかに燃焼を安定させるかというドライ燃焼方式の課題を解消した。

[BUILT]

 大林組や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、川崎重工業は、水素社会構築技術の開発事業で、川崎重工が開発した「マイクロミックス燃焼技術」を用いた「ドライ低NOx(窒素酸化物)水素専焼ガスタービン」の技術実証試験を2020年5月に開始し、7成功したことを同年7月21日に発表した。

コージェネレーションシステムからは約1100キロワットの電力を供給可能

 大林組と川崎重工業は、NEDOが展開する水素社会構築技術開発事業の中で、2017〜2018年度にかけて、水素と天然ガスを併用する発電方式が水素発電導入期に需要が見込める技術と捉えた。

 そして、神戸市や関西電力などの協力を得て、局所的な高温燃焼の発生によるNOx生成を抑制するため「水噴射方式」を採用し、天然ガスと水素の混焼から水素専焼まで対応できる水素ガスタービンの実証試験を行ってきた。実証を通して、兵庫県神戸市のポートアイランドで水素専焼による市街地への熱電力供給も達成している。

 2019年度に、3社は、ドライ低NOx水素専焼ガスタービンの技術開発をスタートし、川崎重工業が開発したドライ低NOx水素専焼ガスタービンの技術実証試験に成功した。2020年5月に開始した実証試験では、水素発電のさらなる発電効率向上とNOxの排出量削減を目的に、ドライ燃焼方式による水素専焼発電の技術実証を行った。

 今回の試験で採用したドライ燃焼方式は、水噴射方式に比べて発電効率が高くNOx排出量も低減できる一方、燃焼速度が速い水素燃焼において火炎の逆流を抑えながらいかに燃焼を安定させるかが課題だった。

「ドライ低NOx水素専焼ガスタービン」の実証試験プラント 出典:大林組

 そこで、微小な水素火炎を用いた燃焼技術マイクロミックス燃焼を使用したドライ低NOx水素専焼ガスタービンを開発し、神戸市ポートアイランドで実証試験を行っている。同水素ガスタービンと排熱回収ボイラを組み合わせたコージェネレーションシステムからは、約1100キロワットの電力と、約2800キロワットの熱エネルギーを蒸気または温水で周辺の公共施設へ供給可能。

ドライ低NOx水素専焼ガスタービンと「マイクロミックス燃焼」のイメージ 出典:大林組

 ドライ低NOx水素専焼ガスタービンの実証運転は、2020年5月〜2020年度末まで断続的に行い、ドライ燃焼方式による水素発電の安定運用や発電効率、環境負荷低減効果などの性能を検証する見込みだ。

 同ガスタービンの技術実証と併せて、水素や地域コミュニティーの近隣施設で利用する熱、電気を総合管理し、経済性や環境性の観点から最適に制御するための統合型エネルギーマネジメントシステムの実証も今秋からスタートし、将来の事業性に対する評価を行う

 また、大林組では、-253度(1気圧)の液化水素が発する冷熱を有効活用するシステムの研究も進める。ガスタービン運転のために必要な水素は、液化水素を蒸発器で気化させて取り出すが、現状では、蒸発器から放出される冷熱のエネルギーを有効に利用できていない。

 さらに、ガスタービンは、夏季など外気温が高くなると吸気温度も上がるため発電出力が低下し、液化水素の蒸発器は外気との温度差により着霜(ちゃくそう)してしまい、除霜(じょそう)のために運転停止が必要になっていた。

液化水素冷熱活用ガスタービン吸気冷却システムのイメージ 出典:大林組

 解決策として開発したシステムでは、液化水素を気化したときの冷熱をガスタービンにおける吸気の冷却に活用することで、電力需要の高い夏季に発電の出力と効率を向上する。

 また、プロパンガスなどの中間熱媒体を用いて液化水素から冷熱を取り出すことで蒸発器の着霜を回避でき、連続運転も可能となり、同システムが将来的に実用化されると、液化水素の冷熱を無駄なく使え、エネルギーマネジメントシステム全体の高効率化に貢献する。

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