下水処理施設の被災時に使える汚水処理技術、帝人フロンティアInterAqua 2021(1/2 ページ)

帝人フロンティアは、これまで自動車や化粧品原料などの工場で排水処理に採用されていた排水処理用繊維担体を用いた余剰汚泥削減型の水処理技術を被災した下水処理場での復旧工事期間中に使用可能か検証を進めている。

» 2020年12月14日 07時00分 公開
[遠藤和宏BUILT]

 帝人フロンティアは、水処理の技術や製品を扱った展示会「InterAqua 2021 第12回水ソリューション総合展」(会期:2020年12月9〜11日、東京ビッグサイト)に出展し、下水の放流などに役立つ排水処理用繊維担体の性能と採用実績を紹介した。

既存のOD法用躯体に流用可能

 排水処理用繊維担体は、特殊な繊維を用いた3次元立体構造で、担体面積は1立方メートルあたり4000〜5000平方メートルで、担体単位重量あたりの汚泥付着量は従来品の2〜4倍に相当し、難分解性有機物の分解や生物処理阻害物質に対する耐菌性も保持している。また、既存の水処理施設に取り付けられ、担体は洗浄せずに使い続けられる。

「排水処理用繊維担体」

 同担体は、用途の1つに、下水処理施設における余剰汚泥削減型の水処理技術への利用がある。余剰汚泥削減型の水処理技術とは、接触酸化法の1つで、反応槽を多段に区切り、排水処理用繊維担体を各段に設置する。同技術は、汚泥を含んだ流入水を反応槽へ流した時に、各段の排水処理用繊維担体がフィルターの役割を果たし、微生物を捕捉して、結果として、反応槽全体で汚泥の自己酸化と食物連鎖を促進し、余剰汚泥を減らして、流入水を清浄化する。

 余剰汚泥削減型の水処理技術は2018年に、国土交通省が行う下水道革新的技術実証事業「B-DASHプロジェクト」の委託研究に採択され、帝人フロンティアやIHIプラントエンジニアリング、辰野町、日本下水事業団が、長野県上伊那郡辰野町にある辰野水処理センターの改築時に適用した。

辰野水処理センターの改築時に適用した余剰汚泥削減型の水処理技術のイメージ

 辰野水処理センターは、オキシデーションディッチ(OD)法を採用した処理施設だったが、既存のOD法用躯体を流用し、余剰汚泥削減型の水処理技術を構築した。余剰汚泥削減型の水処理技術を導入する際には、既存のOD法反応槽に隔壁を設けて、分水槽と混和槽を作り、反応槽の前段にスクリーンを配置し、反応槽内を多段に区切り、担体ユニットを設置した。

 同センターでは、同技術で余剰汚泥の発生量を削減したことで、汚泥処理に関わる電力消費量の削減や施設縮小による機器補修規模の低減、作業の簡略化、汚泥処分量の減量を果たした。

辰野水処理センターの改築時に適用した実証施設の全景と主要設備
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