道路空間の取得と路面点検を1台に集約した新型の計測車両、パスコ維持検査・点検

パスコは、道路点検用のデータも含む多目的の利用に資する道路空間データを、一度の走行計測で取得する新たなコンセプトに基づく計測車両システムを開発した。

» 2020年12月10日 06時00分 公開
[BUILT]

 パスコは2020年12月9日、詳細な路面状況を含む道路空間全体を計測する新コンセプトの計測車両システム「Real Dimension(リアルディメンション)」を開発し、同年11月から本格運用を開始したことを発表した。新型の計測車は、刻一刻と変化する街の情報を空間情報として捉え、スマートシティーまたはスーパーシティーの実現に有益なデジタルツインの構築を目指す。

MMSとRealの機能を1台の車両に集約

「Real Dimension」 提供:パスコ

 これまで道路空間データの計測には、用途別に専用車両を使用していた。道路施設管理や自動運転に必要とされる高精度な道路基盤地図の整備には「MMS(Mobile Mapping System)」を用い、路面の点検・調査や維持管理にはパスコが独自開発した路面性状測定車「Real(Road Excellent Automatic Logging system))」で計測を行っていた。

 今回、MMSとRealの機能を統合し、1台で道路空間全体を計測するとともに、機器やオペレーションの機能性と計測の安全性を強化し、データ解析の効率化とデータ品質の向上も実現した「Real Dimension」を開発した。

 Real Dimensionを活用することで、道路インフラのデジタルツインに不可欠な橋梁(きょうりょう)、トンネル、法面、道路付属物など、道路空間全体の3次元データを1度の走行で取得して、アセットマネジメントとリスクマネジメントが同時に実現する。また、サイバー空間(仮想空間)に構築された高精度な3次元データ上で、さまざまなシミュレーションを行うことにより、インフラ老朽化対策や国土強靭化対策にも貢献する。

左から道路の3次元データ(形状、施設の把握、計測、図化など)、トンネルの3次元データ(首都高速大橋ジャンクション)、道路法面の画像と3次元データ 提供:パスコ

 Real Dimensionは、地図情報レベル500の高精度の道路基盤地図を作成するため、計測車両に毎秒100万点計測のレーザースキャナー、周囲360度の画像を撮影するカメラ、GNSSの受信機器を搭載している。

 道路空間の中で、とくに精度を要する路面性状の計測では、従来のひび割れ用のラインセンサーカメラやわだち掘れ用のレーザースキャナーに代わり、レーザー光源と3Dカメラを組み合わせた最新の計測機器を採用。この機器は、光切断法で路面の微細な高さやひび割れの深さといった違いをキャッチし、ひび割れやわだち掘れを自動で解析する。なお、平たん性については、レーザ変位計と加速度計のユニットで対応する。

 Real Dimensionの用途は、高精度道路基盤地図の作成、路面性状調査・修繕計画策定、道路防災・環境調査、屋外広告物調査、自転車道ネットワーク検討、下水道マンホール蓋調査、河川堤防調査、トンネル・橋梁調査・都市景観・防災分野など多岐にわたることが見込まれる。

路面のひび割れの解析画像。路面画像(左)と路面の高さ画像(右) 提供:パスコ

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