大和ハウス工業は2020年11月25日に、デジタルデータによる一元管理で、建設現場の全工程で生産性向上を実現させるべく、トプコンと基本合意書を締結した。
大和ハウス工業は2020年11月25日、都内で記者会見を開き、デジタルデータによる一元管理で、建設現場の全工程において生産性向上を目指す「デジタルコンストラクション」の実現と推進に向けて、トプコンと基本合意書を締結したことを明かした。
会場では、大和ハウス工業 デジタルコンストラクションPJ責任者 上席執行役員 河野宏氏や建設デジタル推進部 次長 宮内尊彰氏、トプコン 取締役 常務執行役員 江藤隆志氏が、デジタルコンストラクションの内容と今回の基本合意について説明した。
総務省が毎年行っている労働力調査によれば、建設業に従事する労働者は、1997年の455万人をピークに、減少傾向が続いており、2010年には331万人を記録し、2025年には286万人になることを見込んでいる。2007年以降は、全体の約30%が55歳以上を占め、29歳以下は約10%になり、就業者の高齢化は劇的に進行している。
また、内閣府が公表しているデータ「国民経済計算」では、全産業が1994年と2014年を比較して労働生産性が上がっているのに対して、建設業は1994年と2014年を比べて横ばいで、作業の効率化が進んでいない。
大和ハウス工業の河野氏は、「建設業の深刻化する人手不足や高齢化、以前から仕事の能率が上がっていない状況、地域入職者の確保、長時間労働の是正を考慮し、大和ハウス工業は2019年に第6次中期経営計画で、働き方改革と技術基盤の整備を目的に“デジタルコンストラクションプロジェクト”を立ち上げた」と設立経緯を述べた
デジタルコンストラクションプロジェクトは、デジタル技術を用いて先進的な建設プロセスを構築する計画で、2025年までに技術者と技能者の生産性をこれまでと比較して20%アップすることを目標に掲げている。同計画で進めている取り組みの1つには、「スマートコントロールセンター」の活用がある。スマートコントロールセンターは現場の遠隔管理を行う場として、全国10カ所の拠点で2020年10月に運用を開始した。
また、企画・設計、施工、検査・維持管理といった建物のライフサイクル全体を可視化するために、建設物のバーチャルとリアルの空間をデジタルで融合するデジタルツインの構築も並行して進めている。デジタルツインを活用することで、建設プロセスで生じるリードタイムの最適化とコスト削減を後押しする。さらに、気象と交通の情報といったオープンデータを使用して、建物の将来を高精度に予測して、現場に適した工程管理を組み、作業効率も高める。
河野氏は、「バーチャルな空間とリアルの現場をシームレスにつなぐため、精密な位置測定技術は必要不可欠だ。測量技術の分野でトップクラスのシェアを持つトプコンが、当社のデジタルツインを構築するパートナーとして最良と考え、今回の合意に至った」とトプコンと合意書を締結した理由を語った。
続けて、「今後、デジタルコンストラクションでは、設計・計画、施工、維持管理の各工程がつながるデジタル基盤を利用することで、工程プロセスの最適化を図り、デジタルテクロノジーで高い施工品質を確保し、建設技能労働者の作業価値を向上して、建設業を若者にとって魅力ある産業にしていく。そして、生産性をアップし、高品質な施設を建設して、建物の資産価値を高めるとともに、現場のデジタルトランスフォーメーションを促す」とコメントした。
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