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» 2020年10月21日 09時00分 公開

新工法:複数のジャッキの変位調整が数十秒で可能な新システム、大林組

これまでのアンダーピング工法用制御システムでは、無線機などで指示を受けた複数のスタッフが制御油分岐器などを手動調整し、変位量を制御していたため、指令の伝達ミスなどが起きていた。従来システムの課題を解消するため、大林組は、専用の制御装置により全ジャッキを自動制御する「アンダーピニング統合管理システム」を開発した。

[BUILT]

 大林組は、アンダーピニング工法に多変量解析を利用した変位直接制御という調整機能を取り入れ、既設構造物の位置を自動制御するシステムを開発し、実用化した。

 多変量解析とは、互いに関連する複数の要因から成る問題を各要因の相関関係を表す関係式を作成して解決する方法を指す。今回のシステムでは、ジャッキ同士の相関関係を論理的に計算している。

 変位直接制御は、調整したい位置の変位量を入力すれば、個々のジャッキがそれぞれ指定の高さになるように調整する方式。

各ジャッキの制御を100分の1ミリの精度で

 近年の鉄道や道路工事は、既存の地下鉄や新幹線、主要駅ビルといった重要な都市インフラを供用しながら仮受けをする場合が増えており、大規模かつ高度化している。また、工事の進捗に伴いジャッキを支える仮受け構造物が沈下や隆起することがあり、既設構造物に重大な損傷を与える場合もある。重要な構造物の安全性を確保するためには、複数のジャッキのそれぞれを10分の1〜数ミリの範囲で高さ(変位量)調整するといった膨大で繊細な作業が常に求められる。

アンダーピニング工法のイメージ図 出典:大林組

 従来のアンダーピニング工法用制御システムは、無線機などを使って指令をスタッフに伝達し、多数の作業員がポンプや制御油分岐器などを手動調整することで、変位量を制御していた。しかし、大規模なアンダーピニング工法では、数十〜数百のジャッキで既設構造物を仮受けするため、1つのジャッキを動かせば、近隣のジャッキまで動いてしまい、全てのジャッキを同時に調整することは実質的に不可能だった。

 解決策として、設置された複数のジャッキを小さなグループごとに分割し、部分的な調整を試行錯誤することで全体を調整していたが、人力による作業で多くの時間がかかり、指令の伝達や操作のミスなどが起き、課題となっていた。

 そこで、大林組は、手動による調整や試行錯誤による方法を改め、専用の制御装置により全ジャッキを自動制御する「アンダーピニング統合管理システム」を開発した。変位量の調整量算定に多変量解析を採用することで、各ジャッキの制御を100分の1ミリの精度にまで高めた。

従来システム(左)とアンダーピニング統合管理システム(右)との比較 出典:大林組

 新システムを適用することで、既設構造物における変位制御の作業性を向上させられるとともに、人的ミスのリスクが低減され、慎重な操作を要する業務の安全性がアップする。大規模構造物において多数の油圧ジャッキを用いる場合でも、専用の制御装置によって同期させることで、正確かつ同時に自動制御が可能なため、一度に多数のジャッキにおける変位調整を数秒〜数十秒で行えるようになる。

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