鹿島建設は、タブレット端末で撮影した写真からコンクリート打継ぎ面の処理状態を評価するアプリを開発した。アプリを使うことで、コンクリート打継ぎ面の処理状態を現場で広範囲かつ簡便に確かめられ、作業者の能力に依存せず、一定の品質を確保できる。
鹿島建設は2020年9月8日、コンクリート工事でタブレット端末を使い撮影した写真から打継ぎ面の処理状態をアプリケーションで評価し、リアルタイムに見える化するシステムを開発したことを明かした。
コンクリート構造物の打継ぎ面は、表面のレイタンスや緩んだ骨材をハイウォッシャーで除去し、目粗(めあら)しを行う必要がある。打継ぎ面が適切に処理されないと、コンクリート構造物としての一体性が損なわれ、漏水や構造的な欠陥につながる。
また、かぶり部では、水や塩分などの劣化因子が浸透しやすくなり、鉄筋の腐食が加速し、構造物の早期劣化を引き起こす。打継ぎ面の処理状態が、構造物の機能や性能に大きな影響を与えるにもかかわらず、これまで、処理状態の良否を定量的に判定する基準がなかったため、作業者の目視で感覚的に評価され、不十分な処理や過剰な処理が行われているケースがあった。
従来の問題を解消するため、鹿島建設は、打継ぎ面の処理状態をアプリで評し、リアルタイムに見える化するシステムを開発した。開発にあたっては、打継ぎ面にある凹凸の状態や粗骨材の露出状態によって異なる輝度分布を調査。結果、打継ぎ面処理が不十分な面では、凹凸が少なく輝度の違いが小さいため一点に集中した輝度分布を示し、打継面処理が良好な面では、幅広い輝度分布を表すことが判明した。
新システムは、タブレットで撮影した画像に対し、専用アプリで評価する範囲を選択すると、任意のメッシュごとに、処理が十分な箇所は「青」、不十分な箇所は「黄」と「赤」で段階的に表示。判定結果は、評価対象範囲を選択してから5〜10秒程度で解析される。
新システムを用いて、打継ぎ面の処理状態を見える化することで、社員や作業員の経験に頼らず、一定の基準で打継ぎ面の加工状況を良否判定できるため、打継ぎ面の品質を高められる。
鹿島建設は、2018年5月に着手した秋田県雄勝郡東成瀬村の成瀬ダム堤体打設工事と、2019年9月に施工を開始した大阪市東淀川区の京都線・千里線淡路駅周辺連続立体交差工事に新システムを適用し、打継ぎ面の処理不足を排除することで、新旧コンクリートの一体性を確保し、品質を向上できることを確認した。
今後、同社は、さまざまな現場に新システムを適用し、集積したデータを機械学習を用いて判定精度を向上する他、ドローンに搭載して広い面積を簡易に判定することなどを目指す。さらに、新システムを活用して、発注者との確認やプロセス検査を遠隔臨場で行うなど、使用範囲を広げていく。
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