マンションの工事日予約を効率化、社員のストレス軽減に役立つ予約管理システム現場管理(1/2 ページ)

マンションなどの集合住宅では、専有部分の工事や点検に際し、各戸の希望に沿って日程を決める必要がある。この調整作業は管理会社や工事施工会社が行っているが、戸数が増えるにつれ、煩雑さが増し、大きな負担になっていた。ユアサ商事、ユアサクオビス、ダンドリワークスが開発したWeb予約システム「ITENE」は、1物件(50戸平均)の工事や点検で、平均28時間かかっていた調整時間を、平均9.5時間までに短縮できるという。システム導入によって、従事するスタッフの労働環境改善やストレスの軽減が図れるとする。

» 2020年09月09日 10時12分 公開
[川本鉄馬BUILT]

 ユアサ商事、ユアサクオビス、ダンドリワークスの3社は2020年8月26日、共同で会見を開き、集合住宅の改修工事や点検などの日程調整を容易にするWeb予約システム「ITENE(イテネ)」を発表した。

日程調整の負荷を軽減し、建設業を魅力ある業界に

 会見では、まずユアサ商事 専務取締役 執行役員 営業部門統括 住環境マーケット事業本部長の田中謙一氏が、集合住宅の改修工事や点検に際して、多くの課題が存在することを説明した。

 田中氏は、従来の電話や書面の投函による日程調整では、人件費や通信費などで相当なコストが掛かっており、担当スタッフの精神的負担も大きいと指摘する。

 現在、建設業界では、若年層の離職率が高く、20代の働き手は全体の約1割ほど。田中氏は、離職率が高い理由の一つに、長時間労働があり、IT化が遅れていることがその要因とした。そして、今回発表したITENEの利用は、建設業界の働き方改革や魅力度アップの一助になるとの考えを示した。

 続いてダンドリワークス 代表取締役社長の加賀爪宏介氏は、同社とユアサ商事及びユアサクオビスとの関係性を紹介した。ITENEは、システム部分をダンドリワークスが担当し、ユアサクオビスが蓄積する日程調整のノウハウを反映して構築された。

 開発の契機となったのは、数年前からやりとりがあったユアサクオビス担当者からの「こういうことができないか」という相談だったという。ユアサ商事には、グループ全体の社員を対象に、新規事業や製品のアイデアを募る制度が社内に設けられている。ITENEは、先の担当者がこれに応募し、審査を経て事業として結実した。

 ユアサクオビス 代表取締役社長 村山英明氏からは、ITENEの開発背景と目的が示された。村山氏は、自社が管理する集合住宅で、インターフォンの改修工事について、日程調整を行った経験がITENEのきっかけになったと語った。インターフォンの改修は、工事自体は簡単だが作業員が居室に入るため、戸別に工事日を調整することが欠かせない。また、住民とのコミュニケーションで、連絡のタイムラグや行き違いが発生しやすく、それがクレームにつながるケースもある。

 村山氏は、工事の日程調整は、集合住宅では避けて通れないプロセスであり、同様の悩みを抱える管理会社や工事会社は多いとする。そして、ITENEを日程調整で困っている会社に使ってもらい、本業集中による収益性の向上や労働環境の改善に貢献したいと抱負を述べた。

 ITENEの事業は、2023年の3月期で年間8000件の工事・点検での利用を想定し、使用料収入としては3億円を見込んでいる。

左からユアサクオビス 代表取締役社長 村山英明氏、ユアサ商事 執行役員 営業部門統括 住環境マーケット事業本部長 田中謙一氏、ダンドリワークス 代表取締役社長 加賀爪宏介氏

 ITENEの機能とサービス概要については、ユアサ商事 グローイング戦略本部 YES部課長補佐の鳥羽理恵氏とダンドリワークス INETE事業部長兼ダンドリワーク事業部 フィールドセールスマネージャーの杉田清隆氏が説明を行った。

 鳥羽氏と杉田氏は、ITENEはこれまでになかった“業界初”の予約システムだと強調する。予約システムは、他の業種では普及しているが、マンションの工事予約に代用することはできない。それは、既存の予約システムが“予約していない部屋”には対応していないためだ。

 例えば、美容院の予約では、その店を利用したい顧客だけが予約すれば良い。しかし、集合住宅の改修工事や点検は、そこに居住している全部屋を対象としている。そのため、どの部屋の予約が完了し、どこがまだかという、予約状況を確認しなくてはならない。美容院をはじめサービス産業などで使われる他の予約システムには、この機能がないので使えないのだ。

集合住宅の改修工事や点検を専用にしたITENEを開発した理由

 ITENEは、工事対象の部屋全てに対し、予約状況をリアルタイムで管理できるのが特徴となっている。また、複数のマンションを持つ管理会社が、複数の工事会社に工事や点検を依頼するような場合でも、各工事会社間で他の会社が扱う工事の情報は見えないようになっている。ITENEでは、このように情報を細かく、管理するシステム設計のため、居住者のプライバシーも確保する。

ITENE上では協力会社間で工事情報は共有されない
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