2020年3月時点で、高速自動車国道と直轄国道で構成される高規格幹線道路の管理延長は1万1998キロで、うち無料の直轄国道は2427キロ。2030年3月末には、高規格幹線道路の管理延長は約1万2600キロとなり、うち直轄国道は2900キロになる見込み。
国土交通省では、高規格幹線道路の延長による管理エリア拡大や自然災害の影響と路面の異常が増加している現状を考慮し、IT技術を用いて、円滑に道路の点検やモニタリングが行える体制の構築を進めている。
現在、高規格幹線道路で活用しているIT技術には、監視カメラ画像のAI解析による交通量の算出やETC2.0を利用した車両情報の取得や道路の異常を見える化する道路巡回支援システム、滞留車両の発生をセンシングする交通障害自動検知システムがある。
監視カメラ画像のAI解析による交通量の算出は、ディープラーニングで事前に教師データを数千件学習させたAIに監視カメラの映像を読み込ませ、移動する車両や歩行者を抽出する。車両は車種を特定し、歩行者は顔の向きや手の振り方、足の運び方から進行方向を明らかにし、数量を測る。
ETC2.0で取得する車両情報はプローブデータを指す。プローブデータは、ETC2.0の車載器やカーナビと路側機を通信させて得られ、ETC2.0車載器を搭載した車の種別や用途、位置情報、特定のエリアを走行していた時刻、進行方向、速度、加速度、ヨー角度を内包している。プローブデータを活用することで、道路交通法の違反車両発見などが迅速に行える。
道路巡回支援システムは、直轄国道を見回り中の作業員が、路面の異状を発見した際に、タブレットで位置座標や写真、音声を記録できる。登録した情報はPCと共有して、現場の状況を任意のフォーマットに自動でまとめられる。
異状がある路面の位置座標を入力する電子地図は、国土地理院の電子国土基本図(地理院地図)を使用しており、地図データはタブレット内に保存することで、災害時やトンネル内など、通信環境が無い状況でも使える。さらに、電子国土とデジタル道路地図を重ね合わせることで、現在地点の路線名や距離標の自動取得が可能。
交通障害自動検知システムは、監視カメラで取得した映像をクラウド上のAIソフトで分析し、車の交通量や速度、停止状況を見える化し、車両の立ち往生発生を明らかにして、現地対応をスムーズにする。
道路巡回支援システムと交通障害自動検知システムは現在、まだ試行中の段階にあり、現場で効果を確かめながら試験的に運用している。
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