BIM認証/検証を得ることのメリットについて仁井田氏は、「戦略的」と「オペレーション上」の2つがあると説く。戦略的とは、国内とグローバル市場へのアクセスを容易にし、契約や入札の機会を増やすことになり、ブランド価値のアップにもつながる効果を意味する。対してオペレーション上とは、外部の定期的評価や法令順守の明確化以外にも、複数のプロジェクトで一貫性及び効率性の提供が可能になると同時に、サプライチェーンも含めた効率的な作業方法により、コスト削減が見込めることなどが挙げられる。
認証を受ける手順は、最初にBIMの規格書を購入して読み込み、基礎または上級者向けのトレーニングを受講し、提出する文書と規格とのギャップ評価を受けてから、本審査を経て認証取得へと至る。認証/検証の対象となるBIMプロジェクトなどの文書は、既に日本語に対応しており、監査も日本人の監査員が担当するという。
なお規格書は、現時点では英語版をBSIの公式Webから入手するしかないが、2020年内には日本規格協会(JSA)の協力を得て、日本語版の刊行も予定している。
BIMに関連する合計9種類の研修トレーニングは、コロナ禍の影響で、参加人数に制限を設けないWebex/Zoomを利用したオンラインで展開している。コースが英語版の場合は、事前に日本語化した翻訳文をテキストで流すといったフォローもされている。
トレーニングの受講者には、海外で新しく制度化された認定制度によって、試験を受験してパスすれば認定書が授与される。この制度は、日本では夏以降に運用が始まる見通しだという。
仁井田氏は、「2015年からグローバルでBIM認証サービスを開始しているが、これまでに200社以上が取得した。2020年中には、国内企業でも認証が発行される見通し」と語った。
セミナー後半では、BIM認証を取得した企業のケーススタディーを採り上げた。建設/建築業界で多数の受賞歴があるコンサルタント企業の英Curtinsは、BIMプロジェクトを提供する他の企業、とくにBIMについて根拠の無い優位性を謳(うた)う企業と差別化するべく、BIMで独立した認証を受けることを考えつき、ISO 19650のプロセスを準拠することを検討した。
CurtinsではBIM認証の成果として、「品質及び納期など契約上の要求事項を満たすことができた。具体的には、プロジェクト単位で顧客満足度の目標を定義し、その達成レベルを測定することで、満足度の向上につながった。さらにサプライチェーンを効果的に管理し、デジタル技術を使用してプロジェクトに付加価値を与えることで、無駄や非効率を排除して、共同作業に対する能力で顧客に安心感を与えらえれた」と後に有効性を報告している。
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