イギリスを除くEU圏各国の状況をみると、とくに注力しているのが、フランスとドイツで、フランスのBIMは他国と異なり、民間主導で進んでいるため、英国のように義務化のレベルではないが、公共事業に幅広く採用されているという。一方のドイツは、2020年中には公共インフラ建設工事を対象に、BIMプロセス採用の義務化を目指している。
BIMという概念そのものの発祥の地アメリカでは、情報共有が十分ではないことを要因に、イギリスほどには進んでおらず、そのための解決策として、コミュニケーションだけでなく、使用ツールとしての相互運用性の向上を図っている。
アジアに目を向けると、シンガポールはBIM導入に積極的で、2015年には5000平方メートルを超える建物の意匠、構造、設備の設計での確認申請を全てBIMで電子化することが義務化され、同時にBIMを採り入れた企業には補助金の交付なども行っている。また、韓国では日本の国土交通省に相当する国土交通海洋部が2011年に、BIM実施基準の枠組み「共通BIMガイド」を提供し、2016年から公共施設をBIM基本ガイドラインの対象としている他、中国、ドバイ、マレーシアといったアジア諸国での動きも民間工事を中心にで活発になってきている。
足元の日本では、2009年に基礎となるガイドラインが策定されたことで、BIMの気運が高まり、翌2010年には国交省がBIM導入プロジェクトを開始。2014年に官庁営繕事業において、「BIMモデル作成及び利用に関するガイドライン(BIMガイドライン)」を正式発表した。
「日本の施工技術は世界的に見ても優れているが、信頼関係でつながっている側面があり、独特な商習慣が未だに残っている。その点、海外では設計者と施工者が、契約だけの関係のため、日本の事情とは異なる部分が多々ある。国内では今まで2次元CADが主流だったため、3次元モデルで設計や管理するBIMとは相違点が多く、社内の流れやルールなども変更しなくてはならず、BIM導入に利点を見いだせずにシステム化が遅れ、BIMのグローバルでの潮流に乗り遅れている感は否めない。しかし、ここ最近はi-Constructionの施策で、徐々に活路が拓けつつある」(仁井田氏)。
BIMの概念として、英国では取り組み状況に応じて、レベル0〜3までの4段階で分類している。レベル0は紙媒体か電子ペーパー、レベル1は2D/3DCADデータが混在している環境、レベル2は全ての関係者が独自に3DCADモデルを使用、レベル3は全ての関係者が最初から共通の3DCADデータを使用してプロジェクトを進行する状況を示している。BSIでは、このうちレベル2以上をBIM認証サービス「BIM Certification(Kitemark)/Verification サービス」の取得条件としている。
BSIのBIM認証は5種類あり、「KM BIM Design and Construction」は企業のBIMプロジェクトの提供に対して監査して、設計及び建設、サプライチェーン管理、顧客サービスでの取り組みを認証する。「KM BIM Security」は2020年7月に発行されたBIM規格「ISO 19650-5(PAS 1192-5)」の仕様に準じて、セキュリティを対象に監査を行う。
「KM BIM Object」は、製品製造プロセスにBIMを組み込んでいる事を証明するためのもので、「BIM Asset management」は、資産の所有者に対して効果的に維持・運用され、安全、安心、法令順守(建築規制など)を満たしているかを確認する。
唯一“検証(Verification)”を対象にした「VC BIM Design and Construction」は、ISO 19650(Parts1,2)に基づき、BIMに関わる組織やプロジェクト向けに開発され、独立した公平な第三者検証を通じて、BIMに関する能力を測るサービスとなっている。
仁井田氏は補足として、「4つの認証は3年コースで、検証は組織を対象にした1年コースのため、まずはハードルの低い検証から取っていただき、プロジェクトやセキュリティ、アセットマネジメントへと移行してもらうのがベスト。コスト的にも検証の方が安価なので、最初のステップとしてお勧めしたい」と話す。
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