三井E&Sマシナリーと野村総研、道路ひび割れの“AI”自動解析を開発AI

三井E&Sマシナリーと野村総合研究所は、路面下空洞、路面のひび割れ、トンネル覆工コンクリート表面のクラックという3つの点検対象に、AIを採り入れた自動解析システムの実用化を共同で進めている。このうちトンネル点検では、データ取り込みから、AI解析、結果の可視化までをクラウド上に構築する。

» 2020年08月07日 10時00分 公開
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 三井E&Sマシナリーと野村総合研究所は、非破壊検査サービスのAI・クラウド化で共同運用を開始した。

 対象は、路面下空洞、路面のひび割れ、トンネル覆工コンクリート表面のクラック。AIを用いて自動抽出・解析するシステムを共同で開発し、2020年度から順次運用を開始する。

ひび割れ抽出時間を9割短縮

 昨今、道路やトンネルなどの社会インフラの老朽化に伴い、維持管理していくための調査・点検の必要性が高まる一方、技術者不足も深刻化しているため、調査・点検の効率化が求められている。そのため、国土交通省が推進する“i-Construction”の一環で、各種インフラ構造物での点検の機械化とICT、3次元データ活用による効率化が積極的に進められている。

 このたび、野村総合研究所が有するAI技術を転用して、三井E&Sマシナリーが非破壊検査を行って得た調査・点検データをクラウド基盤上で自動解析する技術を構築した。これにより、非破壊検査で取得した大量データの解析に必要な専門技術者の負担を削減し、解析時間短縮による効率化や技術者による解析結果の偏りを平準化するなど点検データ解析の品質向上が期待できるという。

 路面下空洞調査と路面性状調査は、三井E&Sマシナリーで運用しているレーダとレーザーの同時計測が可能な「複合探査車」での計測データに対してAI技術を適用し、レーダ解析画像からは路面下空洞の自動検出、レーザー画像からは路面のひび割れの自動抽出・描画を可能にした。

三井E&Sマシナリーのレーザー装置と車体下部に電磁波レーダ装置を搭載した「複合探査車」 メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2019のブースにて撮影

 従来方法に比べ、レーダ空洞解析では空洞判定/抽出で7割、レーザー画像解析では路面性状ひび割れ率算出のためのひび割れ抽出で9割の時間短縮により、迅速に解析結果を提供できるという。今後は、解析結果を複合探査車の位置情報と同期させ、路面状態の経年変化観察など、モニタリングに活用可能な仕組みも検討していくとしている。

 トンネル点検では、三井E&Sマシナリーが2018年度に運用を始めた時速80キロで走行しながら撮影する検査車両「Tunnel Catcher3(トンネルキャッチャー3:TC3)」の計測データを対象にAI技術を適用。TC3で取得したトンネル表面の高精細画像を基に幅0.2ミリまでのクラックを自動検出することを可能にした。

 現在は、AI自動解析システムを構築しており、2020年度内の完成・実用化を計画している。システム化に向けては、高精細な大容量トンネル撮影データのハンドリングが必要なため、解析能力のスケールアップ・アウトが可能なクラウド上にAI解析機能を実装し、そのクラウド上へのデータ転送にオフラインデータ転送サービスを利用。TC3のデータ取り込みから、データ蓄積、取り出し、AIによる自動解析、解析結果の可視化までを統合したクラウド上のシステムとする。

トンネル履行表面の点検に特化したTunnel Catcher3 出典:三井E&Sマシナリー

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