本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメントに関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。第4回は、ファシリティマネジャーのあるべき姿について論じる。
FMの教科書「公式ガイドファシリティマネジメント」では、「ファシリティマネジャーとは、FMの業務に携わる人達を指し、ファシリティに関する経営責任を代行して、ファシリティを有効かつ効率的に活用することで、最大の効果をもたらし、経営に貢献する」と定義している。
さらに、ファシリティマネジャーは、「利用者の立場に立って、ファシリティを通じて、人・組織・社会に貢献する役割を担う。ファシリティマネジャーは、FMのプロフェッショナルとして、経営価値向上を支援し、知識創造と生産性向上を支援する」ともしている。
このように、ファシリティマネジャーの立場と役割を定義しているが、残念ながら、わが国では建築士のように社会的認知を得ていない。グローバル企業では当然のように存在するファシリティマネジャーであるが、多くの日本企業では、FMの専門組織すらない。総務部や管財部、施設部などがその任を持ち、そこに勤務している人たちがFM的業務を実施しているのだが、プロフェッショナルとしてのファシリティマネジャーを認識してFM業務にあたっているいる人はまだまだ少ない。まして、社会的に医師や弁護士、建築家などと同等のプロフェッションとして周知されるには、さらなる時間が必要だろう。
私たちもFMの普及と社会的認知を目指し「認定ファシリティマネジャー」資格試験を実施しているが、1997年に制度創設以降、23年間で認定ファシリティマネジャー総数は1万5000人を超えたレベルに過ぎない。70年の歴史を持ち、累計登録者が37万人を超える一級建築士とは桁が違う。
企業内でファシリティマネジャーが育たない理由は、FMという概念がここ30年ほどのもので、FMそのものの有効性がまだ十分認識されていないからともいえるが、過去の日本の就業形態が、就職というより就社という概念強く、ある専門性を持って企業内でプロとして働こうという意識のある人は非常に少なかった。一部の専門性のある職種は別にして、ある職能を持って企業内で就労する文化がなく、いわゆる、プロ野球選手のようなサラリーマンの存在は非常に少なく、総務の中でファシリティマネジャーとして活躍する人々はごく一部に限られているのが現状である。
しかし時代は変わってきている。たのもしい「ファシリティマネジャー」と呼ぶにふさわしい人たちも多く現れてきている。
そんな、ファシリティマネジャーにはどのような資質や能力が必要であろうか。
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