工務店の仕事は、人と接する場面が多い。しかし、コロナ禍においてもITツールやクラウドサービスを利用することで、安全かつ効率的に業務をこなすことはできる。あすなろ建築工房では、iPadやクラウドサービスを駆使して、リモートワークを実現させ、新たなビジネスチャンスも模索している。
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福井コンピュータアーキテクトは、工務店やビルダーを対象に、新型コロナウイルスに関するリスクヘッジを多面的に解説するオンラインセミナー「A-Styleフォーラム 2020〜新型コロナウイルスで露呈した工務店のリスク対策」を2020年6月16日に、東京都港区南青山一丁目の「MONSTER STUDIO 乃木坂」から配信した。
本稿では、当日のセッションのうち、コロナ禍で、変化をチャンスに変えることができるのかをテーマにしたあすなろ建築工房の講演を採り上げる。
関尾英隆氏が代表取締役を務めるあすなろ建築工房は、2009年に設立された建築設計事務所。高気密かつ高断熱で、家族のぬくもりが感じられる家を設計の基本スタイルとし、高度な設計力を求められる狭小地での物件も得意としている。
関尾氏は、ITを導入したのは3年ほど前と話す。契機となったのは、知人の工務店が落雷に合い、コンピュータに保存してあったデータが消滅してしまうというアクシデントだった。関尾氏の工房でも、従前からデータ保護の対策をしていたが、予期せぬ自然災害が起こると大事なデータが飛んでしまう。そこで、データの保存はクラウド上で行うことにし、同時に、IT化を進めるため全社員にiPadを支給した。
iPadの導入後は、「紙」を使うことが無くなった。会議では、参加者が各自iPadを持ち寄り、客先でも監督や設計担当者がiPadの画面を見ながら商談を進めるスタイルとなった。
関尾氏がiPad配布の次に着手したのは、業務を効率化する基幹システムの導入だ。工務店の業務では、顧客管理、見積管理、入出金管理、粗利管理、進捗管理などを適切に行わなくてはならない。これらを効率化するのが、地域工務店の業務に特化した基幹システム「工務店クラウドEX」。
あすなろ建築工房では、スケジュールを1カ月単位で区切り、リフォームも含め、年に12棟の案件を扱う。当然ながら担当者が異なるが、顧客から問い合わせの電話があった際にも、相手の名前を聞くだけで、すぐに顧客リストが検索でき、工事の内容や担当者が表示できるという。
このシステムは、見積や入出金管理、粗利管理といった工務店に必要な機能を備えている。入出金管理では、システムの中から業者への支払いができる。また、見積書の機能では客先に持参したiPadで見積書を作成し、そのままPDF化して客に送ることも可能だ。
関尾氏は、会社の経営状態をいつでもチェックできるのがメリットと説明する。これはシステムをカスタマイズすることで実現したものだが、システムを導入する前は工事が終わるまで最終的な粗利は計算することができず、手作業だったので負担も大きかった。それが、今では現場の管理や粗利のチェック、経営状態の把握などが簡単にできる。
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