インタビュー
» 2020年06月03日 05時19分 公開

住宅×AI:【独占取材】1棟ごとに建材が異なる“邸別生産”で、積水ハウスがAIを自社構築した真意 (4/4)

[石原忍,BUILT]
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山口工場の社員自らが構築したAIライン制御

 積水ハウス山口工場で集中生産している部材は、3/4階建て住宅の構法フレキシブルβシステムで欠かせない梁を製造している。もともとは1997年に工業化住宅で世界初の梁勝ちラーメン構造「βシステム構法」のβ梁を作っており、2017年に、3階建て戸建住宅「ビエナ(BIENA)」、賃貸住宅「べレオ(BEREO)」、多用途併用住宅「ベレオプラス(BEREO PLUS)」のコア構法となるフレキシブルβシステムへと進化したことで、従来の1ラインに加え、もう1つの生産ラインを増強し、2ラインによるβ梁の生産体制を整備した。

 新旧2つのラインとなったが、邸別生産では、長短さまざまな形状が1本1本違う梁を流して作るのが基本のため、ボトルネックが次々と変動し、生産性が低下するという問題は改善されないままだった。

前工程後の分岐(図の赤丸)にAIを導入。山口工場のβ梁の2つのラインを適切に自動選択

 問題解消のため、ソニーネットワークコミュニケーションズのディープラーニング・ツール「Neural Network Console」によるAIライン制御に取り組んだ。システムの構築は、工場内の社員が自主的に学び、人工にして30人月を掛け、企画から、設計、開発、環境整備までを成し遂げた。

 独自に構築したNeural Network ConsoleをベースとするAIは、穴あけ・切断といった前工程の後に、2つの生産ラインを判定する分岐点の自動制御に用いている。AIによるラインの選択は、それぞれの稼働状況をモニタリングして、どちらにいま部材を流せば効率的に製造できるかを判断している。AI学習のもととなっているのは、過去の稼働実績で、現在の状況と照らし合わせることで、生産ラインの能力を最大限発揮するためのライン選択を行っている。

 山口工場のAIは、単に適切なラインの自動選択に使用しているだけではなく、IoT機器で設備を監視してデータを蓄積したビッグデータとも組み合わせて、生産計画の立案にも役立てている。AIが将来の生産量を予測し、ラインの稼働時間や各工程に要する作業時間を算出することで、作業員の適切な配置をも実現する。山口工場では2018年にこの仕組みを確立させ、導入前と比較すると生産性が31%アップし、ラインを動かす電力使用も12%削減。作業者の労働時間も9%減り、β梁の製造工程をスマートライン化させることに成功した。

AI×IoT×ビッグデータでスマートライン化された山口工場のβ梁製造工程

邸別生産の行き着く先――

 谷口部長はさらなるAI展開について、「工場以外でのAI活用としては、トラックドライバー不足が顕在化している昨今、早めに運転手を確保するために、需要予測も行っている。納期に必要なトラック台数をあらかじめつかんでおき、先んじてドライバーを手配できるようにしている。工場内で稼働しているリソースは、設備や生産ラインに限らず、フォークリフトや作業者などもあり、これらの位置を検出してAIで効率化することも検討していきたい」と話す。

 最後に、邸別生産はフルオートメーションを最終形態としているのか?の問いに、谷口部長は「当社の住宅は、施主ごとに多様なプランが存在し、ロボットでは置き換え難い。生産工程の最終段階で窓や外壁を組み合わせる作業など、人手や人の感性に頼る部分はまだまだ多い。ハードルが高く投資額も膨大となる完全自動化(フルオートメーション)よりは、人の技術を残しつつ、テクノロジーで補完するという、いわば“半自動化”を目指している。同時に、住宅市場のトレンド変化により、新建材や新柄は続々とこれからも登場してくるため、(生産を効率化するには)製造設備を集約し、再編していく、より集中生産を進めていく必要もあるだろう」と展望を示した。

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