インタビュー
» 2020年06月03日 05時19分 公開

住宅×AI:【独占取材】1棟ごとに建材が異なる“邸別生産”で、積水ハウスがAIを自社構築した真意 (2/4)

[石原忍,BUILT]

高機能部材を集中生産し、一般部材と組み合わせて施工現場へ

 集中生産の設備投資は、積水ハウスで主力商品の高級2階建て鉄骨住宅のラインアップ「イズ・シリーズ」で、無柱かつ大空間に不可欠な構法「ダイナミックフレーム・システム」の生産力向上にまず着手した。

 次に、他社と住宅ブランドを差別化するため、木造の注文住宅ブランド「シャーウッド」向けオリジナル焼き物外壁材、中層住宅ニーズの増大と非住宅分野への進出を見据えて、3/4階建て重量鉄骨の構造材「フレキシブルβシステム」の生産力強化をそれぞれ行ってきた。

「イズ・シリーズ」の天井高2.74メートルの無柱大空間と連続する大開口で縦横に拡がるスローリビングを可能にする「ダイナミックフレーム・システム」

 こうした機能性の高いオリジナル部材は、例えば、ダイナミックフレーム・システムで必須となる外壁材のダインコンクリートは兵庫工場と関東工場、オリジナル焼き物外壁「ベルバーン」は東北工場と静岡工場、フレキシブルβシステムの高強度柱(WHコラム)は静岡工場でというように生産拠点を絞り、出荷時には各工場で作られる一般的な部材と合わせて現場に納品されている。

 一方で、工場の自動化について谷口部長は、「20年以上前からラインごとに改良してきたが、全工程での自動化としては、2010年の中期経営計画で策定した全社構造改革に基づき、生産ライン最適化の一環として、静岡工場の軸組製造ラインにロボット127台を投入したことが転機となった。この新製造ラインにより、自動化率は95%にまで高まり、少数の作業員での24時間生産体制や在庫の少ない“完全邸別生産”が実現した」と話す。

生産部門における2010年以降の主な設備投資(主要構造材)
2010年 静岡工場 「NewBシステム」の構造材を生産する127台のロボットによる自動化ラインを導入。従来60%だった自動化率を95%に高め、24時間生産体制や、自由設計で受注した住宅ごとに生産を行う「完全邸別生産」を実現。施工現場の工程に合わせて生産することで、出荷や施工効率の向上にも寄与
2013年 関東工場 静岡工場と同様のロボットラインを新設→量産体制が整う
2014年 関東工場 鉄骨2階建て住宅の構法を「NewBシステム」による「ユニバーサルフレーム・システム」に統一
2015年 関東工場 βシステム(重量鉄骨3/4階建て住宅の構法)の主要構造材製造ラインの自動化と増強
2016年 静岡工場/山口工場
2017年 静岡工場 3/4階建て新構法「フレキシブルβシステム」を実現するための「WHコラム」(従来比2.5倍の高強度柱)の製造ラインを導入
静岡工場の生産ライン全景

 ここ数年の投資対象は、建設業界で叫ばれる労働力不足と社員の高齢化を受け、外国人や女性、高齢者の労働力を有効活用する目的で、IoTやAIといった新しいテクノロジーを積極的に採り入れている。

 なかでも特筆に値するAIを導入した最初のプロジェクトは、前述した静岡工場で手掛けている陶版外壁ベルバーンの成形工程に適用した。ベルバーン製造工程は、陶芸と同様に粘土を主体とした材料をこね、フォルムと表面のデザインを整え(成形)、養生と乾燥を経て、釉薬(ゆうやく)を塗り、窯で約1100度に焼き上げる。ここまで3時間15分も掛かって完成した原版を次工程で切断加工し、人が目視にて品質の全数検査をするが、今まではこの検査結果の情報をベースに、当日の生産計画の見直しなどを行っていた。

積水ハウス 生産調達本部 企画グループ課長 大野智広氏

 大野課長は、「成形工程の途中で、原板の曲がりや反りなどの形状寸法は、全数自動検査している。しかし、凹みや膨らみなどの外観は定時的な目視検査にどどまり、全数をチェックをすることができず、生産している原版の外観を含む品質を正確に把握することは難しかった。そのため、作り手は過去の実績を考慮して、生産計画を練っていた。しかし、陶版は焼き上げ後に同じ色にすることが難しく、違う日に同じ品種を生産しても、同じ色が出るかは保証できない。従って、生産当日の品質状況も予測しながら、実際に必要な生産枚数よりも多めに生産するため、在庫が増える傾向にあった。在庫を減らすには、生産計画の精度を高める必要があり、検査を最終工程に行うのではなく、新技術によって人の手を掛けず、前倒しして成形工程内で検査することに行き着いた」とAIの導入理由を説明する。

 採用したAIは、コグネックスのディープラーニングベースで画像を解析する「VisionPro ViDi」。成形工程の焼成後に装置(ラインスキャンカメラとLED照明)を入れたことで、品質管理が以前よりも前段階で行え、不良品の早期発見ができるようになった。

AI検査装置の概要

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