インタビュー
» 2020年06月03日 05時19分 公開

住宅×AI:【独占取材】1棟ごとに建材が異なる“邸別生産”で、積水ハウスがAIを自社構築した真意 (3/4)

[石原忍,BUILT]

教師データが少なくて済み、処理スピードが高速な「VisionPro ViDi」

 VisionPro ViDiは、ラインを流れてくる陶版外壁パーツの全体を細かく見るのではなく、変状箇所を重点的に検査するため、処理スピードが速く、1枚(200×32センチ)あたり約2秒で結果が出力される。AI学習の基礎となる教師データも、通常は1000枚近く用意しなければならないが、VisionPro ViDiは10〜数100枚ほどで済む。AIが検知する不具合は、成形中に生じるくぼみや膨らみ、線状の跡、色の濃度などで、AIソフトで判定して該当箇所をマーキングする。

 AI導入の成果としては、リアルタイムに出来形をチェックし、良品の実績値と予測値との乖離(かいり)への備えとして発生していた生産量の0.4%(150平方メートル相当)に当たる不動在庫を4割削減し、全体的なコストダウンにつながった。

 「AIと一口に言っても、印字ラベルの擦れや貼りズレなど正しい画像とのマッチングで良/不良を判定するなら、安価なシステムで十分だが、ベルバーンの不良品は、凹み、膨らみ、汚れ、色ムラなど多種多様。固定化された不具合は何一つ無いため、それなりに学習させて独自に判別できるAIが有効だった」(大野課長)。

陶版外壁「ベルバーン」の製造工程
AI導入後の製造ライン(成形から積載まで)。左から順に、押出乗移り→釉薬塗布前→釉薬塗布後 (クリックで拡大)
焼成後(5列流し)→AI外観検査→積載前 (クリックで拡大)

 VisionPro ViDiの水平展開では、静岡工場と同じようにベルバーンを集中生産している東北工場で、よりもっと前段階の焼く前の粘土を押し出した状態で、外観検査を行っている。この段階で仮に欠陥が見つかれば、乾燥する前なので、リサイクルに回せるため、材料が無駄にならない。

 東北工場のベルバーン生産ラインでは、焼き物である以上、割れが発生するため、設備のどのパラメータが影響を与えたか、AIソフトでのビッグデータ解析も試行している。AIの解析結果から生産条件を見直し、割れ抑制の原因を追究している。

 また、切断加工のフェーズでも、AI活用を検討しており、ソニーネットワークコミュニケーションズの予測算出ソフトウェア「Prediction One」を、出来あがった原版から部材を取る際に、最も歩留まりの良い計算の選定に用いている。既に東北工場でテストしており、実用化すれば、他工場での展開も視野に入れる。

ベルバーン製造の全工程でのAI活用構想

 インタビュー後半では、引き続き邸別生産の礎となる建材生産の高度化をテーマに、静岡や東北とは別の試みを検証している山口工場でのAI、IoT、ビッグデータを融合させた製造工程の“スマートライン化”について聞いた。

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