国交省が2020年度版の遠隔臨場試行方針を策定、新型コロナ対策にも有効産業動向

新型コロナウイルス対策として、遠隔臨場に業界から関心が集まっている。理由は、ウェアラブルカメラを作業員に装着させ、取得した情報で現場の状況を管理者が確かめられるため、3密(密閉・密集・密接)の回避に役立つからだ。遠隔臨場の効果に着目し、現場での早期導入に向け、新たな方針をまとめた。

» 2020年05月19日 09時00分 公開
[BUILT]

 国土交通省はこのほど、遠隔臨場の試行がスムーズに行えるように、2020年度の試行方針を定め、発表した。

試行件数は全国で約100件を見込む

 建設現場の遠隔臨場は、2020年3月2日に公表した資料「建設現場の遠隔臨場に関する試行について」(国官技第333号)内に記載された「建設現場の遠隔臨場に関する試行要領(案)」と、「建設現場における監督・検査の試行要領(案)」で既に案内されている。2020年度も遠隔臨場の試行は、試行要領案と監督・検査要領案に基づく。今回発表した試行方針では、効果的な試行を実現するとともに、課題抽出を狙い、具体的な実施方法をまとめた。

新型コロナ対策にもなりうるウェアラブルカメラなどを用いた遠隔臨場

 対象工事は、各地方整備局などで発注する工事のうち、「工程や材料をチェックまたは立会を映像確認できる工種」と、「遠隔臨場の試行を実施可能な通信環境を作り上げられる現場」と定めた。特に施工現場が遠隔地で、立会が求められ、発注者が施工現場との往復に多大な時間を要する工事と、構造物の立会頻度が多い工事が望ましいとしている。

 試行件数は、全国で約100件を見込んでおり、各地方整備局などで約10件を行う。ただし、受注者との調整などで10件を超える試行に取り組める場合は、各地方整備局の判断で件数を増やせる。

 国土交通省が2020年度に推奨する遠隔臨場の試行手順は、まず、発注時に特記仕様書に記載する。対象に合致する工事は、受注者に要請し、試行可能の回答が得られた場合は、設計変更で、発注者指定型として試行を進められる。

 2020年4月20日に配布された「国官総第12号他通知」に基づき、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策として試行すると、発注者指定型として取り組める。両ケースに適せず、受注者が遠隔臨場の試行を望むパターンは受注者希望型として扱われる。

 撮影は、試行要領案をベースに、通信環境と映像により目的物の判別が行える水準を勘案して、受発注者協議の上、画素数は640×480ピクセルまで、フレームレートは15fpsまで応じる。配信も試行要領案を基準に、映像と音声の仕様に対して、適切な転送レート(平均1Mbps以上)を選べる。

 試行にかかる費用は、受注者希望型は受注者の全額負担。発注者指定型は、試行にかかる費用の全額を技術管理費に計上し、管理費区分は「9:全ての間接費の対象にしない場合」で計算に組み込む。

 発注者指定型に限り、機器の手配は基本的にリースとし、賃料を計上する。やむを得ず購入せざるを得ない機器がある際には、購入費に機器の耐用年数に対する使用期間割合を乗じた分を加える。また、受注者が所持する機器を使用する時も基本的に同様の考え方で進める。

 従来の立会や確認に要する費用は、共通仮設費として既に予算化されているため、試行は、これまでの費用から追加で必要となる費用を計上する。なお、費用の計上は、受注者から見積もりを徴収し、応じる。試行後には、国土交通省発注のもと、受発注者にフォローアップ調査を行う。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.