安藤ハザマとイクシスは、大空間構造物のコンクリート床面を想定し、延べ1500平方メートルを約6時間で、自動ひび割れ点検するロボットを開発した。
安藤ハザマと点検用ロボットを製造・販売するイクシスは、「自律走行式ひび割れ検査ロボット」を開発した。大空間構造物の床面を対象にしたひび割れ検査で、軽量な走行台車型の検査ロボットが自律走行し、撮影を行う。同時にAIで撮影画像からひび割れを検出し、結果を図面に表示する。
今回開発した検査ロボットは、点検の自動化と記録書類作成の削減により、業務の大幅な効率化を実現し、従来の近接目視と比較して約40%の時間短縮が見込める。
ロボットの操作は、検査範囲を指定するだけで、床全面を一定間隔で撮影し、幅0.1ミリ以上のひび割れを0.1ミリ単位で自動検出する。ひび割れ結果は、CAD図面上に幅ごと色分け表示され、出力することもできる。
専用の撮影装置は、遮光カバーに覆われており、カメラと床面の距離やフラッシュライトによる照明の光量や角度が一定に保たれる。そのため、外的要因に左右されず、常に同条件で画像が取得されるため、AI画像認識のひび割れ検出が高精度で行える。
ロボットの走行は、レーザーで周辺環境を認識する「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」技術を採用し、柱やその他の障害物を回避しながら、床面積1500平方メートルを約6時間で自動点検。大空間構造物における床面の一定範囲(建築基準法施行令第112条 第1項に定められている防火区画)を一度に検査することが実現する。
ロボット自体の重さは35キロで、撮影装置と走行台車も分離できるため、次の現場へ持ち運ぶことも容易だ。
撮影画像は、無線LANを介してPCに随時転送され、即時AIでひび割れを検出。これまでのひび割れ点検で一般的だった画像をサーバにアップロードして、その後処理を行うといった手順が不要なため、走行後はすぐに検査結果を図面にプロットし、記録書類が作成できるようになる。
従来のひび割れ点検では、必要な知識を有する検査員が近接目視で実測を行い、その結果を写真やスケッチで記録していたため、一連の検査業務には多くの時間がかかっていた。
最近では、代替となる画像認識を用いたひび割れ検出技術も登場しているものの、多くは人手を伴う画像取得が必要となる。さらに取得する画像は、解像度が高いためデータが重くなり、ひび割れ検出から記録書類の作成には相当の時間を費やし、作業の効率化が求められていた。
安藤ハザマでは、新開発ロボットの精度について、自動検出したひび割れ箇所と、近接目視で実測した箇所を比較。その結果、幅0.1ミリ以上のひび割れに対し、適合率が90%以上となることが確認されたとしている。
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