両社が今回の開発を推進した背景には、都市部で高速道路橋を計画する際に、橋脚の位置と基礎の規模が制約されることや短期間での施工を求められていたことが理由としてある。また、短工期を可能にするため、コンクリート床版に比べて軽量な鋼床版が採用されるケースが多いが、金属疲労亀裂やそれに伴う舗装の損傷などのリスクが存在する。
阪神高速道路と鹿島建設はこれまで、鋼床版に替わる軽さと高い耐疲労性を兼ね備えたコンクリート系の道路橋床版として、ワッフル型UFC床版の開発に取り組んできた。使用するUFCは、鹿島建設が2006年に開発した「サクセム」で、羽田空港D滑走路の桟橋(さんばし)部などに適用した実績を有す。
今回、共同開発したUFC床版はサクセムの技術を応用。両社は床版のリニューアル工事に用いる平板型UFC床版もともに開発し、2018年に阪神高速道路15号堺線の玉出入路リニューアル工事に適用した。
UFC床版は、一般的なコンクリートの約5倍という高い圧縮強度(180ニュートンパー立方ミリメート)を生かして、より大きなプレストレス(圧縮力)が導入可能。さらに、鋼繊維の補強効果により高い引張強度が得られるため、鉄筋が不要になり、床版のスリム化が行える。
一方、ワッフル型UFC床版は、床版の下面に設けられたワッフルのような多数のくぼみにより、一層軽量化を図れるとともに、2方向にPC鋼材を配置し、プレテンション方式で2方向にプレストレスを取り入れている。
大抵のプレキャスト工場が導入している緊張設備では、PC鋼材を1方向にしか緊張できないため、今回、新たに2方向に緊張できる架台を構築。併せて、床版下面をワッフル型の形状にするため、型枠を柔軟性のあるウレタン製に変更し、UFCの収縮により製作時に床版に生じるひび割れを防止した。
高強度で高い耐久性を備えており、鋼床版に相当する軽さのワッフル型UFC床版は、今後の橋梁(きょうりょう)工事など新たな都市高速道路の構築に役立つことが期待される。両社は、リニューアル工事の工期短縮が進められる平板型とともに、普及を図っていく。
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