中断面トンネルは、これまで連続ベルトコンベヤーを設置すると、作業空間の確保が難しく、施工上の課題になっていた。フジタとタグチ工業は、問題を解消する目的で、新たな連続ベルトコンベヤーを開発した。
大和ハウス工業グループのフジタは2020年2月10日、タグチ工業と共同で、トンネル工事の際に、坑内に設置しても広い作業スペースの確保が容易な中断面トンネル用「上下自在連続ベルトコンベヤー」を開発したと発表した。
上下自在連続ベルトコンベヤーは、掘削区間で搬送ベルトを高所へ持ち上げる「上越しテールピース台車」や高所における搬送ベルト配置を簡便化する「ブラケットフレーム」、覆工区間で搬送ベルトを短いスパンで低所へ移設する「カテナリーZ台車」で構成されている。
これらの機器を連結させることにより、坑内の掘削区間で、作業スペースの有効活用を可能にするとともに、従前と比べ、重機走行路を45%拡幅し、切羽重機の離合(すれ違い)幅を保てるようなる。
覆工区間では、上下自在連続ベルトコンベヤーが稼働中でも覆工が制限なく行え、設備としてテレスコセントルとフジタ製「連続ベルコン通過型スライディングステージ」を併用することで、工程全体の生産性向上とトンネル断面の領域拡大も進められる。
搬送ベルト配置は、フレーム材の組み立てを簡素化したブラケットフレームを採用しているため、これまで求められてきた準備が不要になり、結果として、搬送ベルト延伸に費やす時間を30%カットし、掘削作業の早期再開が簡単になった。
新型ベルトコンベヤーが開発されたバックグラウンドには、近年の山岳トンネル工事にて、トンネル施工延長の長距離化で、ダンプから連続ベルトコンベヤーを用いたズリ出し方式が一般的になっていることがある。
大断面トンネルに比べ、坑内の作業スペースに限りがある中断面トンネルでは、従来の連続ベルトコンベヤーを使用する場合、坑内に搬送ベルトを固定して取り付けるため、作業スペースが狭くなる。
このため、掘削や覆工の効率低下と、施工機械の駐機スペースを確保することが困難だった。さらに、搬送ベルトの延伸では、高所におけるフレーム材の継ぎ足しなど、煩雑な仕事に多くの時間を割いてしまうことで、週に1度のペースでトンネル掘削を1〜2日程度中断する事態を招いていた。
上下自在連続ベルトコンベヤーは、北海道二海郡八雲町地内で実施している北海道新幹線、野田追トンネル(北)他工事に導入され、生産性を高める。
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