建設業界では加速する人手不足を解決するために、建設機械を自動で運転する技術の開発を進めている。自動運転技術が完成することで、1人で複数の建設機械を操縦したり、遠隔地からテレワークで操作することが容易になるため、省人化を実現する。また、人と建設機械の接触回数を減らせるため、事故発生件数も削減できると見込まれている。大成建設では、自動運転技術の開発速度を上げるVRを用いた新ワークフローを構築した。
FORUM8は2019年11月12〜15日、東京都港区の品川インターシティーホールで、プライベートイベント「FORUM8デザイン フェスティバル2019」を開催した。
3日目のセッションのうち、大成建設 技術センター 生産技術開発部 スマート技術開発室 メカトロニクスチーム チームリーダーの青木浩章氏の講演「UC-win/Roadを活用した建設機械の自動運転技術開発」をとり上げる。
冒頭、青木氏は建設業界の問題点について触れた。業界では近年、入職者数の低下や高齢化による退職者数の増加などを背景に、労働者の減少が顕著になってきている。全業種と比較して、死亡事故の発生件数が多いことも課題だという。建設業労働災害防止協会の資料によれば、2017年の業界の死亡者数は294人で、うち建設機械の操作などを原因にして、亡くなった人の数は109人にも及ぶ。
業界では、人手不足の解消と死亡事故発生件数ゼロを目指し、建設機械の自動運転技術開発に取り組んでいる。青木氏は、「自動運転技術が完成することで、1人で複数の建設機械を操縦することが可能になり省人化につなげられる。人と建設機械の接触回数を減らせば、死亡事故の発生件数も少なくなると見込んでいる」と説明した。
大成建設では効率良く自動運転技術を開発するために、FORUM8製VR空間作成ソフト「UC-win/Road」を活用しているという。UC-win/Roadは、線形や断面、地形処理、モデル設定などで、さまざまなVR空間を作り上げられる。大成建設では、UC-win/Roadを用いて、自動運転を支えるアルゴリズムを検証している。
青木氏はUC-win/Roadを使用したアルゴリズムの検証について、「入力されたアルゴリズムが、建設機械をどのように稼働させるかVR上で確かめられることが利点だ。VR上で検証するため、実機と用地が不要で、機器が損傷するというリスクもない。特に自動運転用ソフト開発の初期段階で、大幅に業務時間を短縮することやコストカットに役立つことが明らかになっている。また、VR上でシミュレーションを実施すると、さまざまな角度から建設機械の動きを見れるのがメリットだ」と指摘した。
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