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» 2020年01月08日 08時00分 公開

山岳トンネル工事:「S-BEAT」を無線式に改良、作業時間が従来の半分に

清水建設は、前方探査システム「S-BEAT」を改良し、有線式から無線式に変更した新システムを開発した。新システムにより、データ計測の作業効率が向上するとともに、坑内環境に左右されずに計測を行うことが可能になった。複数のトンネル現場に新システムを試験適用した結果、大幅な省力化・省人化効果がもたらされた。

[BUILT]

 清水建設は、トンネル掘削作業を中断することなく、切羽前方80メートル程度先までの地山状況を3次元化で予測できる前方探査システム「S-BEAT」を改良し、データ通信方式を従来の有線式から無線式へとリニューアルした。

従来3人の作業を1人に省人化

 山岳トンネル工事を安全かつ効率的に進めていくためには、切羽前方の地山性状を事前に把握し、状況に応じた適切な施工計画を立案する必要がある。確実な地山探査の手法は先進調査ボーリングなどにより地山の性状を直接確認することだが、掘削作業の中断を伴い費用も高額なため、頻繁に実施できないのが実情だという。

 こういった現状を解消するために、清水建設は2016年にS-BEATを開発した。S-BEATは地山を伝わる振動が岩盤性状の変化点で反射する現象を利用し、トンネル内で観測した振動データから反射面の位置を推定する探査システム。具体的には、油圧ブレーカーの掘削振動を起振源に、トンネル側壁に打ち込まれた複数の既設ロックボルト頭部を受振点とし、受振センサーが検知した振動データを解析することで、トンネル周辺の3次元的な地山性状を推定する。

 S-BEATを活用して切羽前方の地山状況を日常的にモニタリングしておき、詳細調査が必要な劣化部や地質の変化する箇所を検知した場合に限り、ボーリング調査を実施することで、掘削工程に与える影響と探査費用を最小限に抑えられる。

 S-BEATの旧来システムは、ロックボルト頭部に装着した受振センサーと、振動データを記録するデータロガー、データ解析ソフトを組み込んだPCをケーブルで接続し、データ計測を行っていた。このため、システムの設置・撤収に手間と時間がかかり、湧水などの影響で路盤状況が悪い現場では、コネクターの損傷やケーブル配線からのノイズの影響を受ける懸念があった。

S-BEAT(無線式)による前方探査のイメージ 出典:清水建設

 新システムでは、受振センサーを無線式の加速度センサーとし、センサーとデータロガー、ロックボルトへの取付治具を一体化した受振ユニットを新たに開発。この受振ユニットをロックボルト頭部に装着するだけでシステムの設置作業が完了し、データ計測もタブレットを介して実施するため、従来は3人を要していた作業が1人でも行えるようになった。

 システムの設置から撤収までの時間も、従来の約20分から10分程度に短縮。また、ケーブルのひっかけによる断線・転倒などの懸念がなくなり、湧水を防ぐことを目的とした養生作業なども不要なため、安全性や現場適用性が格段に上がったという。

 今後、清水建設は神奈川県秦野市内で施工中の新東名高速道路高取山トンネル西工事(発注者:NEXCO中日本)に実装する予定だ。

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