戸田建設の「AI切羽評価支援システム」、現場事務所に居ながらボタンを押すだけ山岳トンネル工事

戸田建設は、山岳トンネル工事で地山状況の予測や支保パターンの妥当性を評価する「切羽観察」で、技術者によって生じる結果のブレを無くすため、判断をAIに置き換える羽評価支援システムの開発に着手した。

» 2020年01月07日 07時00分 公開
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 戸田建設は2019年12月12日、Ristと共同で、山岳トンネル工事の切羽評価に使用するAI切羽評価支援システム「T-Face AI(ティーフェイスアイ)」を開発した。既にNEXCO西日本発注の新名神高速道路宇治田原トンネル東工事に適用し、試行を始めているという。

評価者の経験や知識に依存する評価方法からの脱却

 T-Face AIの名称由来は、「T」がToda(戸田)とTunnel(トンネル)、「Face」がFace(切羽)、「AI」が切羽を観察する目(Eye)とAIを意味する。T-Face AIを採用することで、これまでのように熟練技術者が切羽面に出向いて観察する必要が無くなり、現場事務所に居ながらにして、切羽画像データをAIが評価する。結果は、支保パターンを決定する際の参考データとして活用する。

 AI活用により、切羽評価者の経験や知識などに依存した判断結果のバラツキを低減させて、正確性が上がることで、切羽観察中の肌落ち事故を防ぎ、トンネル自体の不安定化も抑えられる。

AI切羽評価支援システムのPC操作画面 出典:戸田建設

 システム上では、人間の脳が日常的に行っている“学習”と“判定”のメカニズムをPC上でモデル化。学習によって作成したAIの判定モデルを使い、切羽評価を行う。

 T-Face AIの特徴の一つとして、現場での実用性を考慮したシンプルで扱いやすい操作画面が挙げられる。学習の際は、不要箇所を削除した切羽写真と切羽評価点がセットになった教師データと、学習回数を指定して、開始ボタンを押すだけで完了。判定時には、使用するAIモデルと切羽写真を選び、予測開始のボタンを押せばスタートする。

 通常の高速道路トンネルを対象にした切羽評価点法では、切羽の上半断面を天端、左肩部、右肩部の3つのパーツに分割。圧縮強度や傾斜などの7項目を技術者が評価して、算出した切羽評価点をベースに支保パターンを決定する。T-Face AIでは、7項目のうち画像認識に適した風化変質、割れ目間隔、割れ目状態の3項目を範囲とし、残りの4項目は、技術者が判定した評価区分を用い、AIと人それぞれの特性に応じて分担させている。

左から3分割した切羽断面、A高速道路トンネルの7つの切羽評価項目 出典:戸田建設

 実現場での適用では、宇治田原トンネルの地山と地質が類似したトンネルの切羽画像と評価区分を教師データとし、平均で約84%の正答率が得られた。T-Face AIの運用を開始した宇治田原トンネル東工事では、上り線の掘削が進むに伴って、教師データが蓄積されていくため、AIの精度が向上。次の下り線の掘削に着手する頃には、かなり精度の高い判定結果が期待できるとしている。

「宇治田原トンネル東工事」での掘削に伴う精度向上のイメージ 出典:戸田建設

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