国内外の鉄道・道路・橋梁などの計画や設計、3次元モデル化、インフラマネジメント、まちづくりコーディネートなどを行う中央復建コンサルタンツは、CIMにいち早く取り組み、設計提案に活用してきた。社内では3次元モデルを単に「作る」だけではなく、実践的に「使う」を標ぼうし、CADオペレータや管理者、さらには一般職を対象にした独自の研修を定期開催し、各ポジションでCIMを扱える人材を自社で賄うため育成に努めている。
オートデスクは2019年10月9日、建築や土木などのユーザー事例や最新ソリューションが一堂に会したセミナーイベント「Autodesk University Japan 2019」を東京都港区のグランドニッコー東京 台場で開催した。このうち土木向けのセッションでは、中央復建コンサルタンツがCIMを「作る」から「使う」をキーワードに、「CIM活用のための人材育成」と題して講演した。登壇者は、中央復建コンサルタンツ 総合技術本部 CIM推進室の森博昭室長。
森氏は冒頭のあいさつで、「本日はCIMを作るから使う、さらにどう使うかをポイントに、CIMにおける人材育成について解説する。これからBIM/CIMを始めてみようと考えている企業や発注者の方は、ぜひ参考にしていただきたい」と述べた。
中央復建コンサルタンツは、大阪に本社を置き、従業員数は500人ほど。森氏自身は現在、CIM推進室の室長を務めているが、もともとは下水道や河川を専門にしていた。
同社が最初に3次元設計を導入したのは2007年度のこと。以来、土木分野で試行錯誤を繰り返しながら、これまでに国土交通省から、優良工事で局長表彰8件、事務所長表彰10件をそれぞれ受賞し、着実にCIMの実績を積んできている。現在では、年間で30件ほどのCIM案件をこなしすまでに社内体制を整えた。
ただ、ここに至るまでの道のりは、決して順風満帆なものではなかったと、森氏は述懐する。CIMの本格運用は約10年前からだが、その前段階として検討を始めたのは2007年度。当時は、Blue Ocean Project(BOP)と称して、3次元設計だけではなく、新しいテクノロジーで10個ぐらいテーマを作り、「いわゆるRed Ocean=赤い血の海、言い換えるなら、過当な価格競争に巻き込まれるのではなくて、青い広い大海原を自由に泳ぎ回れるような新規事業を確立し、他社と差別化を図ることを目指した」。このBOPの一つとして、3次元設計を取り組んだのがそもそもの始まりだった。
翌年の2008年度には、首都高速道路のプロポーザル案件で、3次元設計を採り入れ、コスト縮減やミス防止、合意形成を円滑化する技術提案をして設計者に特定された。「ただ、それまでに大変な苦労があったため、社内ではとうとう決まっちゃったねと話していた」と、落札しても手放しでは喜べなかったことを苦笑いで回想する。
だが、この案件の受注が、それまでの単なる机上の検討から、実践へ移行するきっかけとなった。さらに次の案件でも、神奈川県建設局から高く評価され、表彰を受賞したことで、スタッフが自信を持ち、CIM推進を後押しした。
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