何もせずに部門で勝手に広がっていったケースもある。一例を挙げるとドローンは推進室が特段勧めることもなく、現場の判断で導入されたケースだ。今では、飛行可能なところならドローンを飛ばして、無理なエリアは地上のレーザースキャナーで地形を撮って点群データを生成するというように、使い分けをして現場で活用している。
「誰もが便利なものだと理解できれば、何もサポートせずに新たなテクノロジーを使い始めていることは多い。360度撮影できるRICOH THETAは、これは使える機器だと分かり、10台以上を購入し、グループごとでも各1台を配備。VRのヘッドマウントディスプレイ(HMD)は4台ほど買った。計画段階の橋梁(きょうりょう)モデルに、360度画像を重ね合わせて、VRゴーグルでみたら立体的にモデルが見られ、手間が掛からないし、現地写真の撮り忘れにもならず、作業効率の改善につながった。CIM推進でも同様に、業務に役立つことを現場に気付かせることが近道になるだろう」(森氏)。
CIM活用の前提について森氏は「モデルを作るためには、まずは目的をはっきりさせることが重要。こういう使い方をするから、こういうモデルを作ると関係者間で合意形成を図らなければならない。ただ、基準となるCIMガイドラインは、あくまで目安なので、方向性が示されているにすぎない。これを参考にモデルを作り、さらに活用していくのがベストだ」と説明する。
直近の事例として、2019年度のCIM案件では、トンネルの詳細設計で、国交省のガイドラインを参考に、発注者と相談しつつ設計仕様パターンごとに必要な情報を載せていくこととし、属性情報とCIMモデルをひもづけていった。
その際、一般的なBIMのように、モデルそのものに関連情報を直接保存するのではなく、外部への参照という方式を採用した。設計段階の情報は本業務で入力し、施工・維持管理段階の譲歩は、あとでデータ入力や更新ができるように、フォルダとのリンクで対応。統合モデルには、各種リンクボタン(設計図面、属性情報、騒音解析、仮設計画など)を配置し、関連付けを行った。
イメージは、Navisworksで統合モデルを作り、3Dモデル上に「点検01」などの附箋が貼られ、そこに各種情報をリンク。点検時には、カルテとして結果を外部に保存でき、情報を参照したいときは統合モデルから飛べるようにしている。
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