セイコーエプソンは、構造ヘルスモニタリングに最適な高耐久の加速度センサーを新開発した。社会インフラの老朽化や維持管理費の増大などといった社会課題の解決策として、センサーを用い構造物の健全性を診断する「構造ヘルスモニタリング」を訴求していく。
セイコーエプソンは、全国で老朽化が進む社会インフラに対し、同社の強みである高精度センシング技術で、予防保全型の維持管理を低コストで実現することを掲げている。
橋梁(きょうりょう)やトンネルの長寿命化に向けた新技術が一堂に会した「第3回橋梁・トンネル技術展」(会期:2019年11月27〜29日、幕張メッセ)で、ビルや道路付帯構造物、橋、トンネル、鉄塔などの構造ヘルスモニタリングのコアとなるIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測ユニット)製品群を出品した。
ブースでは、2019年5月に発表した加速度センサー「M-A552」を使った「鋼橋向けたわみ常時監視ソリューション」を提案した。この技術は、橋梁に屋外対応の加速度センサーを取り付けて、主桁のたわみを常時モニタリングする。取得した揺れのデータは3GまたはLTE通信で、クラウドに送り、異常値(しきい値)を検出した場合は、管理者のスマートフォンやブラウザに警告メールを送信する仕組みだ。
橋への取り付けは、センサー自体に備え付けのマグネットで、貼り付けるだけのカンタン施工。機器構成もシンプルなため、低い導入コストで、インフラの維持管理が実現する。
高性能な3軸加速度センサーのM-A552は、2019年5月からサンプル出荷を開始した「M-A352」と性能はそのままに、ニーズが高かった産業分野で幅広く採用されているネットワークプロトコルのCAN(Controller Area Network)に応じる「M-A552AC1」と、シリアル転送のインタフェースRS-422を装備する「M-A552AR1」の2種類から成る。
スペックは、土木構造物の微動計測に広く使用されているサーボ加速度計と同等のノイズ性能でありながら、金属筐体を採用したことで、IP67相当の防水/防塵(ぼうじん)の性能を有する。耐衝撃性も、従来品の約4倍となる1200Gで、動作温度範囲は-30度〜70度。これらの機能により、屋外の厳しい環境下で、長距離、高安定性、高信頼性が要求される多様な用途に適用することが可能になった。
セイコーエプソンの担当者は、「エプソンでは、時計の水晶センサーをベースに、2014年には初となる加速度センサーを発売した。以降、そのセンシング技術は市場から高い評価を得ており、車両の振動や軌道計測、機器の状態監視、土木構造物など多様なアプリケーションに導入されている。近年は、センサーを用いて構造物の健全性を診断する構造ヘルスモニタリングと呼ばれる技術の需要が高まっており、低コストで簡単に設置して、遠隔から計測できる利点をウリに、30メートルほどの小規模な橋梁をメインターゲットに据えて提案していく」と話す。
なお、M-A552シリーズのサンプル出荷は2019年夏からスタートし、量産は2020年春を予定している。
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