国土交通省の資料によれば、橋梁(きょうりょう)は高度成長期に大量に建設されており、2020年代には、その多くが完工後から55年以上を迎える。さまざま要因により、橋の経年劣化が進む中、メンテナンスや状態の可視化は急務だ。こういった状況の中、西松建設は佐賀大学の伊藤幸広教授と共に、自走式調査ロボット「コロコロチェッカー」と併用することで、斜材保護管内部の水分量を測れる「水分測定装置」を開発した。
西松建設と佐賀大学の伊藤幸広教授は、2012年に実用化した斜張保護管の自走式調査ロボット「コロコロチェッカー」のオプション装置「水分測定装置」を開発した。
斜張橋(しゃちょうきょう)の斜材保護管に貫通するような損傷があった場合、保護管内部へ水分が侵入し、内部に設置されているケーブルの腐食の原因となる。このため、保護管内部の水分の有無は斜張橋を維持管理するために重要な情報だ。
だが、コロコロチェッカーなどの従来の斜材点検装置は、斜材保護管の表面性状を確認・記録するものであり、保護管内の水分の計測は困難だった。
こういった悩みの種を取り除くために開発されたのが水分測定装置。水分測定装置は、コロコロチェッカー本体と連結し使用する。コロコロチェッカーが水分測定装置をけん引する形で、移動しながら連続で計測し、斜材全線に及ぶ斜材保護管内の水分の状況を可視化する。
水分測定装置は、高周波容量式の水分計を採用し、内側の水分計に取り付けられた2つの電極を斜材ケーブルに常に密着させるV型電極アームを2機搭載している。
V型電極アームは、アーム長を伸縮させて電極位置を調整することで、国内における斜張橋の斜材保護管のほぼ全て(菅径85〜220ミリの範囲)をカバーする。また、斜材を挟んで2機配置することにより、保護管内のケーブル位置の偏りに対して測定精度を確保可能。水分測定装置は、フレームやカバー、測定器のみで構成され、動力がないため、軽量で作業性にも優れるという。
水分測定装置のサイズは、415(幅)×415(奥行き)×415(高さ)ミリで、データ記憶はメモリ方式、電源は9ボルトの乾電池を使用する。
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